演技指導の個人授業が終わった後、萩庭桂太が矢野さんを外で撮影すると言って連れ出したところで、まず私は演技指導の先生の話を聴いた。

 やはり遠い境遇の人と近しくなるためには、まずは近くの外堀から埋める必要がある……。

「矢野くんはポテンシャルの高い人ですよ」

 でしょう! と言いたくなったが、静かに頷く。

「最初に会ったとき、目がいいな、と思いました。この目をもっと生かしてあげたいなと。芝居への欲がすごくある。でも、それを形にする手段がまだ少ない。実はちゃらい見た目とはギャップがあって、真面目な人です。昭和の男みたいなところがある(笑)。本当に礼儀正しい。役者は熱いものがないと大成しません。監督に動かされて形になることがあったとしても、自分の中の壁を乗り越えて本物の役者にならないといけない。彼は乗り越えていく真摯さがあるから、きっと伸びていくと思います」

 昭和の男かあ。いいじゃないの。私も昭和の生まれです。え? 関係ない? 東京オリンピックの年なんですけどね。バレーボールが東洋の魔女だったんですって。え? どうでもいい? 黙ってます。はい。

 今日21時からのフジテレビ系『GTO』は、彼を中心としたストーリーになるそうだ。エリート崩れの数学教師・勅使川原優役。

 「エリート崩れ」ってまたそそられますね。え? それも、私だけ?

  • 矢野聖人

    1991年東京都生まれ。蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』のオーディションで8523人の応募者のなかから選ばれ、デビュー。その後、2011年『身毒丸』を好演。その他ドラマ『GOLD』『リーガル・ハイ』、映画『天国からのエール』などで活躍し、現在は『GTO』に出演中。体脂肪率4%のボディが女性誌でも話題を集めている。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太