「草食男子」ならぬ「食虫植物男子」
矢野聖人
- Magazine ID: 1120
- Posted: 2012.08.10
仕事が終わると、飲みにいくのも好きだという矢野さんを、珍しく萩庭桂太が誘った。
「みんなで飲みにいくかー」
インタビューの場所は目黒の居酒屋になった。お店のおねえさんがチロチロとこちらを見る。彼は大きなバッグをもっていたのだが、ふと気づくとおねえさんは丸い椅子を2つももってきて、バッグを置けるようにしてくれた。ちなみにほかの全員も、大きめな荷物をもっていたのだが……。
「お店のおねえさん、矢野さんを気にしてるよー」
彼だけがマッコリも大盛りに注がれた。
「イケメンって、ある意味、うざいね。店の中で気になってしかたないんだものねー」
ホッピーを自分で注ぎながら萩庭桂太が言った。
「それにしても細いねー。何キロ?」
「50キロです」
隣りで美人マネージャーがひと言「体脂肪率4%なんですよ」と添えてくれた。途端に萩庭桂太はスイッチが入ったように「ぼくもそうだった」と言い出した。「写真がある」と、iPhoneをまさぐっている。
「……若い頃の写真を見せるようになったらオヤジですよ」
そんな私の言葉に耳を貸そうとせず「ほら」と矢野さんに見せている。張り合おうとするところが恥ずかしい。23歳の萩庭は頬がこけていた。よほど食べられなかったのだろう。
萩庭桂太は何を思ったのか、どんどんインタビューし始めた。「どんなタイプの女の子が好きなの?」。
「お洒落なコが好きです。ぼくが服好きなんで。どんなに可愛い女のコでも着ている服がださかったら、ちょっとがっかりですね。草食系に見えるって言われるけど、がっつり肉食系ですよ。そういう男って『ロールキャベツ男子』って言われるらしいけどそんな甘いもんじゃないですよ。ぼくは『食虫植物』と言ってます!」
食虫植物?
「ほら、植物なのに、虫が来たらパクッといっちゃうやつ!」
うふ、パクッとかー ♡
別れ際、私はせめて居酒屋のおねえさんに見せつけるようにして、彼と握手したのであった。
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矢野聖人
1991年東京都生まれ。蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』のオーディションで8523人の応募者のなかから選ばれ、デビュー。その後、2011年『身毒丸』を好演。その他ドラマ『GOLD』『リーガル・ハイ』、映画『天国からのエール』などで活躍し、現在は『GTO』に出演中。体脂肪率4%のボディが女性誌でも話題を集めている。
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取材・文:森 綾
1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太