育児は“育自”
斉藤里恵
- Magazine ID: 1459
- Posted: 2014.07.03
愛娘と二人きりの暮らしのなかで、栄万ちゃんを大切に思うあまり感情的になってしまうことが多かったという里恵さん。
「バレエをやりたい!と毎日のように踊りながら言うものですから、年齢的に時期外れでしたが特別に受けさせていただいたオーディションの個人面接で……。受け答えをきちんとする娘なので大丈夫と信じていたのに、お粗末な挨拶に始まり、お絵かきしたいと言って駄々をこねて机を叩いたり、年齢を6歳と言ったり、本当にふさげた態度に震える思いでした。その場は何とか笑顔で乗り切りましたが、車に乗ってエンジンをかけるなり怒りが爆発。『何のためのオーディションなの? バレエ本当にやりたいの?』と泣きながら怒ってしまいました」
幼い娘に、つい感情をぶつけてしまうことを悩んで友達に相談したところ、「アンガーマネジメント」のセミナーを紹介された。アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手につきあうための心理教育。自分自身の怒りを理解することで、感情をコントロールできるようになり、イライラすることなく過ごせるようになるという。
「セミナーを受けた直後に出かけた香港旅行では、一度も娘に怒りませんでした。娘にも確認しましたら『全然怒ってない。ママは笑ってると可愛いよ。大好き、愛してる!』と言ってくれました」
最近では、怒る前に「怒って意味があるのか? これは怒ることなのか?」と自問自答して、自然に答えが出るようになってきたという里恵さん。彼女が感情的に怒らなくなると、栄万ちゃんも手がかからなくなったという。
「今まで、怒らなくてもいいようなことで怒鳴りつけていたなあって、時間を取り戻したいくらい反省しています。まさに育児は育自ですね」
無駄なエネルギーを使うことなく、笑顔だけが増えていく毎日。その幸せは、アンガーマネジメントのおかげであり、その講師である鍋島正子さんに出会うことができたからだという。しかし、自分をなんとか変えたい、という彼女自身の強い気持ちがあったからこそ、幸せが実現したのではないか。
ところで、栄万ちゃんが生まれた頃から再びハンドルを握るようになったという里恵さん。免許は20歳のときに取得した。当時は補聴器(人工内耳)をつけて車のクラクションの音が聴こえることが条件だったが、現在ではワイドミラーの装着などにより、耳が全く聞こえなくても車の免許が取れるようになっている。
母になってもアクティブに、エネルギッシュに活動を続ける里恵さん。今後はどのような活動を予定しているのだろうか?
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斉藤里恵
1984年2月3日生。青森県出身。髄膜炎の後遺症で1歳10カ月で聴力を完全に失う。接客業の楽しさに目覚め19歳で水商売の道に進む。東京銀座の高級クラブで筆談ホステスとして人気ナンバーワンとなる。2009年青森市の観光大使に就任。同年『筆談ホステス』『筆談ホステス~愛の言葉』(光文社)および同書コミックス版は累計50万部突破のベストセラー。10年ハワイで第一子となる女の子を出産。4歳になる娘の育児を日々楽しんでいる。
オフィシャルブログ「筆談ホステス」斉藤里恵のほっこり日記
http://ameblo.jp/saitorie/
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会
http://www.angermanagement.co.jp -
取材・文:加藤いづみ
コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。
https://www.facebook.com/mi.company
撮影:萩庭桂太