演奏中、右で同じくヴァイオリンを弾く松浦梨沙(前回の写真左から2人目)とアイコンタクトをとるときのその瞳がなんともいえずかわいい。

 花井悠希(写真右)は、3歳からヴァイオリンを弾き始めた。東京音楽大学を卒業後、同大学院音楽研究科を修了。2010年にソロで『光の風~ヴァイオリン・クラシックス』『主人公~さだまさしクラシックス』を2枚同時にリリースした。

 1966カルテットでの活動も2010年にスタートしているので、この年は花井のキャリアが大きく動き出した年といっていい。

 ユニットではポール・マッカートニーの役割だ。

 ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』のジャケットで、ポールは裸足で横断歩道を渡っている。だから、1966カルテットの『アビイ・ロード・ソナタ』のジャケットで、花井も東京よりも寒い冬のロンドンで靴を脱いで撮影した。

「寒かったあー!」

 素足でコンクリートを何度も歩かされた撮影をふり返る。

 音楽的にも、ポールの楽曲が大好きだという。

「2013年のポール・マッカートニーの東京公演に、1966カルテットの4人で観に行ったんですよ。私の大好きな『ブラックバード』を歌ってくれて、東京ドームの客席で号泣してしまいました。まさか、あの曲をポールの声で聴けるなんて」

 花井のヴァイオリンはとろけるような音色。1966カルテットでは、ビートルズのロックナンバーを温かく仕上げているのが彼女だ。

「ビートルズの楽曲の中では、アコースティックな味わいのある曲が特に好きです。『ブラックバード』とか『ひとりぼっちのあいつ』とか」

 メロディアスで繊細な曲がお気に入りなのだ。

 繊細さを好むのは、音楽だけではない。男性も、繊細さが感じられる人がいいらしい。

「シャイで、細くて、けんかが弱そう」

 花井のヴァイオリンの温かさ、繊細さは、そんな志向とも関係しているのかもしれない。

 明日は、チェリストの林はるか(写真左)を紹介する。

『アビイ・ロード・ソナタ』

2014年6月18日発売
CD 3,000円+税 COCQ-85069
http://columbia.jp/artist-info/1966quartet/COCQ-85069.html

  • 1966 QUARTET(1966カルテット)

    2010年に結成したクラシックをベースに、ビートルズをはじめ洋楽のカバーを演奏する女性カルテット。メンバーは、松浦梨沙(ヴァイオリン)、花井悠希(ヴァイオリン)、林はるか(チェロ)、江頭美保(ピアノ)。ビートルズが来日した1966年をカルテット名にし、『ノルウェーの森~ザ・ビートルズ・クラシックス』でCDデビュー。『ウィ・ウィル・ロック・ユー~クイーン・クラシックス』『スリラー~マイケル・ジャクソン・クラシックス』『ヘルプ!~ビートルズ・クラシックス』をリリース。最新アルバムは、6月18日発売の『アビイ・ロード・ソナタ』(日本コロムビア ¥3,000+税)。
    6月17日(火)に『アビイ・ロード・ソナタ』発売記念コンサートを東京・王子ホールで開催。その後、「ビートルズ・クラシックス・コンサート」を7月10日(木)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール、12日(土)東京・東大和市文化会館ハミングホール、24日(木)北海道・歌登フォレストピアホールで開催。8月31日(日)には大阪・新歌舞伎座の「ビートルズ・クラシックス&魅惑のラヴ・サウンズ」コンサートに参加。
    http://columbia.jp/1966quartet/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太