ステージのセンターで、躍動感あふれるヴァイオリンを弾くのが、松浦梨沙だ(写真左から2人目)。

 2010年に1966カルテットを結成した時、プロデューサーからリーダーに指名された。「単純に最年長だからです」と謙遜するが、このユニットを常に俯瞰して見て、メンバーそれぞれに配慮しているのがわかる。

 5歳からヴァイオリンを始めた彼女は、第6回大阪国際音楽コンクールなど、数々のコンクールに入賞。

 1966カルテットには、ビートルズ4人のキャラクターがそれぞれに与えられているが、松浦の役割はジョン・レノンだ。『アビイ・ロード・ソナタ』のジャケット撮影では、『アビイ・ロード』のジョンと同じ、上下白のスーツを着て撮影をした。

「音楽家としてはポール・マッカートニーが好きなんですけれどね。『マーサ・マイ・ディア』とか『ブラックバード』が特に」

 とはいうものの、ユニットの中で演奏も佇まいももっともロックを感じるのが松浦だ。そのあたりはジョン・レノンに近いのではないだろうか。シャープな演奏が魅力だ。

 アビイ・ロード・スタジオに入った時、松浦は感激と興奮で胸が震えた。

「とにかく広い。ヴァイオリンを弾くと、スタジオではなく、コンサートホールのように響きます。細かいことは気にしないで思い切り弾いてごらん、とスタジオに励まされているような気がしました」

 ビートルズでよく知られるアビイ・ロード・スタジオは、クラシックの聖地でもある。EMIレーベルのオーケストラやオペラの数々の名盤がレコーディングされているのだ。

「ものすごく開放感があって、だから私たちもおおらかな気持ちで演奏できました」

 ちなみに、彼女が好きな男性のタイプは年上だそう。

「年齢の差は気になりません」

 とのことだ。

 明日は、もう1人のヴァイオリニスト、花井悠希(写真右から1人目)を紹介する。

『アビイ・ロード・ソナタ』

2014年6月18日発売
CD 3,000円+税 COCQ-85069
http://columbia.jp/artist-info/1966quartet/COCQ-85069.html

  • 1966 QUARTET(1966カルテット)

    2010年に結成したクラシックをベースに、ビートルズをはじめ洋楽のカバーを演奏する女性カルテット。メンバーは、松浦梨沙(ヴァイオリン)、花井悠希(ヴァイオリン)、林はるか(チェロ)、江頭美保(ピアノ)。ビートルズが来日した1966年をカルテット名にし、『ノルウェーの森~ザ・ビートルズ・クラシックス』でCDデビュー。『ウィ・ウィル・ロック・ユー~クイーン・クラシックス』『スリラー~マイケル・ジャクソン・クラシックス』『ヘルプ!~ビートルズ・クラシックス』をリリース。最新アルバムは、6月18日発売の『アビイ・ロード・ソナタ』(日本コロムビア ¥3,000+税)。
    6月17日(火)に『アビイ・ロード・ソナタ』発売記念コンサートを東京・王子ホールで開催。その後、「ビートルズ・クラシックス・コンサート」を7月10日(木)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール、12日(土)東京・東大和市文化会館ハミングホール、24日(木)北海道・歌登フォレストピアホールで開催。8月31日(日)には大阪・新歌舞伎座の「ビートルズ・クラシックス&魅惑のラヴ・サウンズ」コンサートに参加。
    http://columbia.jp/1966quartet/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太