2013年、松下奈緒は、パリ、オランダ、ローマ、スイスを旅した。

 ドキュメンタリー番組『永遠のオードリー』で、オードリー・ヘプバーンゆかりの地を訪ねたのだ。

 そのロケで訪れたスイスのトロシュナという町に心打たれた。

 1993年、オードリーがその生涯を終えた土地だ。

「空気がきれいで、景色がきれいで、花にあふれていて、すれ違う人のだれもが笑顔で挨拶してくれました。そういうシンプルな美しさ、優しさ、思いやりに囲まれることが一番幸せ。あらためて思いました。いつかあそこに住みたい」

 松下は現在、スロバキア、チェコ、ハンガリー、ポーランドと日本が積極的に外交を行おうという「V4+日本」交流年の親善大使を務めている。

 そのテーマ曲も作曲中だ。

「スケールの大きいインストゥルメンタルを書きたい。できることならば、ピアノに向かって、作ろう! と思って作曲するのではなく、旅で見た景色や出会った人との体験から自然に生まれてきた感情を音にしたいですね」

 このインタビューを行った会場、ビルボードライブ東京でのライヴのアンコール、黒のワンピースに衣装を変えてのラストナンバーは「Together」。

 松下奈緒の代表作の1つで、会場が最も盛り上がるナンバーだ。

「女優としてのステージが変わったのが朝ドラだったように、音楽家としてのステージが変わった曲がこれかもしれません。それまでの私にとって、音楽はイコールクラシックでした。でも『Together』には、ジャズやポップや、もちろんクラシックも含め、さまざまな音楽のテイストを感じることができます。この曲によって私のピアノにもグルーヴが生まれたし、さまざまな演奏家とも出会えました。たぶん、リスナーのかたがたの私に対するイメージも変わったと思う。この曲でライヴを終えられることはとても幸せです」

『WOMAN』

発売中(2013年10月9日発売)
CD 3,000円+税 ESCL-4113
http://www.sonymusic.co.jp/artist/matsushita-nao/discography/ESCL-4113

  • 出演:松下奈緒(まつした・なお)

    ピアニスト、シンガー、女優。1985年兵庫県出身。2004年東京音楽大学器楽科在学中に、ドラマ『仔犬のワルツ』で女優デビュー。10年NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の主演で国民的女優となる。そのほかに『Good Job~グッジョブ』『CONTROL~犯罪心理捜査~』『胡桃の部屋』『二十四の瞳』『花の鎖』などで主演。音楽家としては、06年にアルバム『dolce』でデビュー。最新作は、富士通ゼネラルエアコンCMソング「永遠のハジメマシテ」やフジテレビ系連続ドラマ『鴨、京都へ行く。-老舗旅館の女将日記-』挿入曲「ホントのひかり」、などを収録した『WOMAN』(エピックソニー 3000円+税)。
    http://www.matsushita-nao.com/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影協力:ビルボードライブ東京 http://www.billboard-live.com/
ヘアメイク:YONE
撮影:萩庭桂太