運命の3.11
八神純子
- Magazine ID: 1396
- Posted: 2014.02.13
2010年にNHKの『SONGS』に出演し、日本で八神純子の生の声を渇望する声が高まった。昔のままになめらかで心地よい高音で歌う彼女に、私のような往年のファンたちが再び心を傾け始めたのだろう。
「ちょうどブルースカイオーケストラの77周年記念公演があり、ある日突然、『やりませんか』とオファーをいただいたんです。OKをして、私がとった飛行機のチケットが3月11日発、だったんです」
アメリカ西海岸時間の3月10日夜10時過ぎ。東日本大震災は起こった。
「息子が『明日の飛行機は飛ばないかもしれないよ』と私に言いに来ました。映像を見てびっくりしましたよ。帰らないほうがいいのでは、とも言われたけど、私自身に帰らないという気持ちはこれっぽっちもありませんでした。直行便が全てキャンセルになったのでハワイから1日遅れで日本に入り、成田からそのまま名古屋に入ったんです」
それまでにもロサンゼルスの地震や阪神淡路大震災、ニューヨークの9.11……と、心を痛めることはあった。だからこそ今度は、という思いがあったようだ。
「何か大きな災害が起こる度に、自分が守りに入って、間口がどんどん狭くなっていってる気がしていたんです。だからこそ、今回は飛んで行きたかった」
東北への支援は今も続けている。あの頃と違って、今は自分でスケジュールを切る。広げた手帳は、細かい文字で書き込まれて真っ黒になっていた。
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出演:八神純子
愛知県生まれ。1978年に「思い出は美しすぎて」でプロ・デビュー。同年、同タイトルのアルバムがオリコン5位になる。その後「みずいろの雨」などヒット曲を連発。86年に音楽プロデューサー、ジョン・スタンレー氏と結婚、2児の母となる。2010年頃から本格復帰の呼び声が高まり、11年にSHIBUYA-AXで10年ぶりのライブを行った。2月からNHK『みんなのうた』でオンエアされる「チョコと私」が2月26日(水)にリリースされ、3月30日(日)、31日(月)には東京・コットンクラブを皮切りに大阪、名古屋、横浜で後藤次利、松原正樹、村上秀一、佐藤準という錚々たるメンバーとライブハウスのツアーを再開する。
http://junkoyagami.com/ -
取材・文:森 綾
1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影協力:「塩谷哲プロデュース Saltish Night vol.XVll」
Earth Beat、SOGO TOKYO
撮影:萩庭桂太