飛行機に1人で乗れない自分が怖くなった
八神純子
- Magazine ID: 1394
- Posted: 2014.02.11
初めてお会いする八神純子さんは、80年代にテレビで拝見していたイメージそのままに、ぱあっと明るく発するものがある人だった。そこにアメリカは西海岸の太陽の光まで蓄えたような自由さと元気さがあった。
結婚されてお子さんも生まれ、幸せに暮らしている様子が感じられた。
20歳でデビューし、なんとなく「結婚してロスに行っちゃった」というイメージがあったのだが、その前に仕事の上で事務所を移籍するという大きな出来事があったようだ。
「アルバムを1年に2枚出したりして、あの頃は本当に時間がなかったですね。ただただ、周りに自分より年上の人たちが何人もいて、みんながすべて段取りをしてくれて、そこで歌うという感じでした。仕事が入ったら私用は削るべきだと思っていたので、よく私用をすっ飛ばしました。それでわがままと勘違いされてしまうことがあったかもしれませんね。自分がなくなるようで怖くなって、25歳でヤマハを出ました」
「自分がなくなるようで」を代表する大きな出来事があった。
「あるとき、私1人で飛行機に乗る事になったんです。ところが『チェックイン』ってどうしたらいいのかがわからなかった。これはヤバいぞ、と。こんなことをしていたら、人として生きていけないと思った。音楽以外、何もできない人間になっちゃうんじゃないかと思って」
そういえば、20歳の誕生日だった1月5日にデビューしたから、成人式にも出ていなかった。
事務所を移籍する。そこから自分で選び取る人生が始まっていった。
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出演:八神純子
愛知県生まれ。1978年に「思い出は美しすぎて」でプロ・デビュー。同年、同タイトルのアルバムがオリコン5位になる。その後「みずいろの雨」などヒット曲を連発。86年に音楽プロデューサー、ジョン・スタンレー氏と結婚、2児の母となる。2010年頃から本格復帰の呼び声が高まり、11年にSHIBUYA-AXで10年ぶりのライブを行った。2月からNHK『みんなのうた』でオンエアされる「チョコと私」が2月26日(水)にリリースされ、3月30日(日)、31日(月)には東京・コットンクラブを皮切りに大阪、名古屋、横浜で後藤次利、松原正樹、村上秀一、佐藤準という錚々たるメンバーとライブハウスのツアーを再開する。
http://junkoyagami.com/ -
取材・文:森 綾
1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太