私に足りないものをもっていた人
八神純子
- Magazine ID: 1395
- Posted: 2014.02.12
「ジョン(夫)は私がもっていないものをもってる、すごい人だなと思いました。音楽で言うとリズムに強い」
結婚して、ロスに住む。そのことを両親には事後報告で伝えたと笑顔で言う。
「そこから25年ですからね、もう。私、いい娘じゃないなと思いますけど、一方で、自分が親になってこうも思います。親のことを考えて子ども自身がやりたいことをせばめるのは、親にとってもうれしいことじゃないな、って。後になって『こうしたかったけど、お母さんの事を考えて止めた』と言われるのはつらいですもんね」
長女は24歳、長男は20歳になった。ご主人は職業を変え、弁護士として活躍されている。
「子どもが2人とも大人になったのもあって、私はまた日本での音楽活動を本格的に再開できるようになりました」
車社会の現地では、母親が送り迎えをしないと部活もできない。長女はバレーボール、長男はバスケットボールをしていた。
「日本人の母親としてアメリカでの子育ては大変でした。正直、その間、音楽を止めてしまうべきじゃなかったとも思った。でも、たくましさのようなものは身についたし、私にしか書けない楽曲もそこで育ったものがあるかもしれません」
何よりも、送り迎えの車中で我が子と交わしたコミュニケーションが、きっとこれからの彼女の活動をより強く支えていくのではないかと思った。
-
出演:八神純子
愛知県生まれ。1978年に「思い出は美しすぎて」でプロ・デビュー。同年、同タイトルのアルバムがオリコン5位になる。その後「みずいろの雨」などヒット曲を連発。86年に音楽プロデューサー、ジョン・スタンレー氏と結婚、2児の母となる。2010年頃から本格復帰の呼び声が高まり、11年にSHIBUYA-AXで10年ぶりのライブを行った。2月からNHK『みんなのうた』でオンエアされる「チョコと私」が2月26日(水)にリリースされ、3月30日(日)、31日(月)には東京・コットンクラブを皮切りに大阪、名古屋、横浜で後藤次利、松原正樹、村上秀一、佐藤準という錚々たるメンバーとライブハウスのツアーを再開する。
http://junkoyagami.com/ -
取材・文:森 綾
1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太