やがて少しずつ、メディアの仕事にも声がかかるようになった。

 画面でまったく緊張していないように見えるよ、と私が言うと、彼女は大きな手振りで否定した。

「いや、もうやばいです。緊張しますよ。本当に今も緊張する。でも『緊張しているのが伝わらないのがいい。表情に出ないのがいい』と、よくテレビのスタッフに言われます。浪人時代に表情を消すことを学んだのかもしれない。劇団でも当初の役は人型ロボットとか、妖精の役が多かったです(笑)」

 NHKに出るようになって、両親も喜んでくれるようになった。

「楽しいです。この仕事の前までは両親の顔をまともに見られなかった。今はちらっと見られます」

 女優としての仕事にも意欲的だ。

「急ぎはしないですが、細く長く女優を続けていきたい。きっとタイミングがあると信じています。流行り過ぎず、着実に仕事ができればいいです」

 インタビューをした帰り道、一緒に駅まで歩いた。彼女はしみじみ言った。

「こういうインタビューって、テレビと違いますね……。私、ちゃんと話せましたか」

 様々なメディアを幼い頃から知って、その棲み分けを知っている世代なのだなと思った。そして彼女は、その一つ一つに全力を尽くそうとしているのだな、と。

 机に向かう受験生のように純粋に一生懸命で、どこか不器用で。

 画面に出てくる米田弥央はメガネできりっと、そんな心を奮い立たせているのかもしれない。

  • 出演:米田弥央

    1978年富山県生まれ。早稲田大学理工学部在学中から劇団に所属、多くのバイトを経験しながら女優に。現在はタレントとしても活躍中。NHK総合「スタジオパークからこんにちは」(月~金曜日13:27~)“特ダネ”ハンターとしてレギュラー出演中のほか、BS日テレ「ふたり道」(木・金曜日21:54~)、ロート製薬「メンソレータムAD乳液」CMなどが好評。
    公式HP http://www.lotstaffs.jp/mioyoneda.html
    ブログ「ダジャレの品格」 http://blog.livedoor.jp/mio1215yoneda/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
撮影:萩庭桂太