五線紙に自筆で書き溜められた楽曲の束を見ていると、今回、彼女が自分の歌を自分で選んで、歌って弾いて出したかった思いが胸に迫ってきた。

 1曲目に入っている『歌なんて』の歌詞を思い出した。

♫ 歌なんて 歌なんて なんの役に立つものか

「歌しか好きじゃない」人が、なぜそんな歌をつくったんだろう。率直に、そう問うてみた。

「ある意味、自殺したみたいな歌ですもんね。でもこの歌さえ出せればいいと思ったくらいの気持ちでした。5年前に書いたんです」

 答えにはなっていなかった。でも、こんな風に彼女は言葉を続けた。

「最後は『歌うたえ 歌うたえ』にしたんですけどね。最後まで否定し続けてもよかったかもしれない。何がなんでも解決しなくてもよかった」

 大事なことほど、肝心なことほど、答えはすぐには出ない。答えなどないこともある。あえて私もここでこの歌の意味を求める必要もなかろう。それで、これからうたいたい歌はどんな歌かと尋ねてみた。

「これからまた形が変わっていくかもしれませんね。今回は一曲もなかった、ラブソングをいっぱい歌いたいな」

 また川村結花さんの新しいラブソングが聴いてみたい。ちゃんとひとつの恋の物語が詰まっている、一曲一曲を。

  • 出演:川村結花

    大阪府生まれ。1995年よりシンガーソングライターとして活動を開始。自らピアノの弾き語りライブを続けながら、他のアーティストへの楽曲提供を数多く行う。2010年、FUNKY MONKEY BABYSに提供した「あとひとつ」で、同年の日本レコード大賞作曲賞受賞。新譜『private exhibition』のリリース記念ライブを2月16日(日)札幌・KRAPS HALL、2月23日(日)東京・南青山MANDALA、3月1日(土)静岡・常林寺白龍観音堂ホール、3月9日(日)大阪・Music Club JANUSで行う。
    http://www.kawamurayuka.com/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太