日本でのサウンドトラックの仕事では、もはや第一線の人となった吉俣さんが、次に目指すのは海外だ。

 すでに映画『冷静と情熱のあいだ』のサウンドトラックCDは韓国で年間売り上げが7位になったこともあり、2011年にニューヨークで舞台の音楽も手がけている。

「舞台はオフ・オフ・ブロードウェイで3週間、17公演やりました。向こうに住んでいる日本人と外国人のスタッフで。ベルリンから音響の人が来たり、パリから映像の人が来たり。そこで僕の音楽が流れるのが気持ちいいんですよ。異文化の中に名前がある。その感じが嬉しいんです」

 音楽監修した舞台『ノブナガ・ザ・フール』をヨーロッパにもっていこうという夢もある。

「『超時空要塞マクロス』の河森正治さんの作品です。まだ発表できないんですが14年は都内の大きなホールでできたら、という話も出ていて、いつかこれでまたヨーロッパに行けたらいいなと思っています。新しい舞台の音楽をやって世界へ行こう。また口に出して言ってたら、叶うんじゃないかな」

 蛇足ながら、私が吉俣良さんの楽曲に感じるのは、オーケストラの楽器の人、一人ひとりのために書く「この楽器のこの人に出してほしい」たったひとつの音、である。

 無駄なくシンプルに掛け合って行くその音の集大成は、必ずや国境を超えて愛されていくだろう。吉俣良の世界は、いよいよ、日本から溢れ出ていきそうだ。

  • 出演:吉俣良

    作曲家、編曲家。1959年鹿児島県生まれ。横浜市立大学在学中より有名アーティストのステージメンバーとして活動しており、84年から92年までロック・バンド「リボルバー」のキーボードプレイヤーを担当。97年からまずは民放ドラマのサウンドトラックを手がけ、NHK大河ドラマ『篤姫』(2008)『江~姫たちの戦国~』(11)の作曲で一躍脚光を浴びる。映画『冷静と情熱のあいだ』のサウンドトラックが韓国などで大人気になり、現在は海外での活動も多い。14年も映像、舞台、自身のライブなど多方面での活躍が期待されている。
    http://www.yoshimataryo.com/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:ACQUA tua 岡元コースケ http://acqua.co.jp
撮影:萩庭桂太