さて、私は今回の取材の最も大事な任務を忘れていたわけではなかった。

 それはいつまでもイ・ビョンホンやクォン・サンウ、ウォンビンなどと言っておらず、次なる韓流イケメンスターを青田買いすることである。

 もちろん、パーティーでは日本から出席しているはずの福山雅治を探すよりも、現地のイケメンを探すことに余念がなかった。その成果がまずこのイ・ヘウとの出会いである。私はすかさず2ショットをお願いして撮影してもらった。美しいだけではないこの清潔感。とうの昔に忘れ去ったものである。

「デビュー作は『パーフェクト・ゲーム』という高校野球の監督をしている父親と息子の物語。実在の野球選手の話なんですよ。ぼくはその監督の息子で、プロ野球選手になった男の役です。父親の期待が強いけど、なかなか応えられない。それでこっそり体を鍛えているんです。プロ野球には慶尚道と全羅道という地域の政治的対立という大きな背景もあって、なかなか面白い内容です」

 彼はこの映画でセカンドを守る選手を演じているが、映画の話が来るまで、野球とはまったく無縁だった。

「ボールをもったこともなかったので、6カ月練習しました。スポーツは、子どもの頃からアイスホッケーをやっていたんですが。ピアノ、フルート、絵。両親はぼくになんでもできるようになってほしくて、小学校からいろんなお稽古事をしていました」

 何にでも挑戦してきた幅広い経験が、彼が自由に演じる素地になっているのだろう。

「3カ月前、横浜に超新星のコンサートを観にいきました。韓国よりすごい人気で驚きました。彼らとは、友達なんです。一緒にお寿司を食べましたよ!」

 いいなあ。回ってるのでよければ、ごちそうします!

 ……私が男性の俳優だと生気を取り戻すのを見たアンさんが、もう一人イケメンをブッキングしてくれた。

 それがイ・ジフンだった。すでに日本の熟女ファンに目をつけられているようで「ちょっとー」と肩を叩かれていた。

「映画は準備中なんですが、今、『学』というテレビドラマで主人公を演じています。また、もうすぐ日本でも歌手のIUと共演しているドラマ『最高だ、イ・スンシン』もオンエアされるはずです」

 IUはYOUR EYES ONLYで早くに取材した韓国の女性シンガーだ。そのときの写真を見せると「おおっ」と喜んでくれた。やっと信用された気がした。

 それで『学』っていうのはどんな話なんだろうか。

「父親から愛をもらえない男が、ある友達と出会って彼に父親の愛のような物を感じるんです。ところがその友達はいわゆる不良。男は友達と一緒によくない道に走ってしまう。でも卒業前に考えを変えて、男は警察官になる。そしてそのヤクザな友達と対立する形になってしまうんです。彼をいい道へ向けようと懸命に努力するんですが……。これは韓国の学校の抱える現実を表しているんですよね」

 イ・ジフンは26歳。現実のお父さんとは仲良しなんだろうか。

「昔はあまりわかり合えませんでした。ぼくは役者になりたいし、父親のこういう息子になってほしい、という考えには合わせられなかった。でも軍隊に行って、その時間にいろんなことを考え、社会に戻って、父親と初めて正直に会話しました。膝を揃えて『演劇をしたいんです』と話しました。父親は反対しました。6カ月、家に戻れなかった。その間にこのドラマの主演が決まりました。それで、少し、認めてくれました。最近になって、やっとまた父親と語り合いました。『なぜあのとき、ぼくのやりたいことに反対したの』と聞いたら、父親は言いました。『芸能界は孤独だし、とても難しいところだ。成功しなかったときに苦しい生活をしなくちゃならない。それを思うと、反対せざるを得なかったのだ』と。それを聞いて、また『学』を見たときに、ぼくは泣けてきました」

『学』を観たくなった。そしてそのストーリー以上に、彼が訥々と語ってくれたリアル・ストーリーは、温かいドラマだった。

 韓国は儒教の教えが深く浸透する国だ。親に従う。長男が家を支える。古いように思えるが、それは昭和の日本にも根付いていたものだった。

 めんどくさいが心地よい、家族という原点。

 韓流映画に流れる「熱さ」も、そこにつながっている気がした。

(取材・文:森 綾/撮影:萩庭桂太)