結婚してから「CanCam」の専属モデル、そして歌手、タレントになっていく彼女。それが数奇な運命としかいいようのない展開なのだ。

「結婚しても読者モデルは続けていたんです。『CanCam』の読者モデルに採用されて、月に一度くらい大阪で撮影がある時に呼ばれていました。そのうちに東京での撮影にも呼ばれるようになって、専属モデルに抜擢されたんです。

 それで東京に来る頻度が多くなって、月に1週間くらいは上京して撮影するという生活になりました。そうなってくると、モデルとしてもっと仕事がしたいと思い始めました。でも結婚相手は、妻は家にいてほしい、というスタンスでした。応援してくれているのに、寂しい気持ちにさせてしまい、徐々に考え方が違ってきたんですね。何度も話し合った結果、25歳の時に離婚しました」

 美容師をやりながら「CanCam」の読者モデルに。読者の支持、反響も大きく専属モデルへと大抜擢。というなかなかドラマチックな展開。しかしながら、ただの幸運というだけでなく、モデルとしての彼女がひときわ輝いていたという証拠でしょう。

「でも、そこからが大変で。もともと、モデルのキャリアも浅く、自信もなく、自己管理、体型維持ができなくて太ってしまい、それが写真に出てしまいました。東京の生活にも不安を抱えていましたし、どんどんマイナス思考に……。そうなると『今月もダメだった』って負のスパイラル状態、ポジティブになれませんでした。

 その時に当時の所属事務所から『歌をやってみないか』って提案がありました。私は歌手を目指したこともないし、歌に自信もありませんでした。人前でカラオケを歌うことでさえ恥ずかしいタイプです。そんな私が歌手デビューできるなんて思ってもみませんでした。でも、事務所の人が考えてくれたことですし、できることを頑張ってみようと思いました。最初はとまどいましたけど、いろいろなアーティストのライブに行ったり、様々なジャンルの音楽を聞いたり……。徐々に未知の世界にワクワクしてきたのを覚えています。

 まずはヴォイス・トレーニングから始めて、半年後にメジャー・デビュー。すると『特命係長 只野仁』というドラマの主題歌にも決まりって……、ドラマを壊さないか、私の声で大丈夫か、とても不安でしたけど(笑)。家族と一緒に番組を見たときは感動しました」

 世の中は不公平と不条理に満ち溢れています。歌手を目指すものの願いかなわず挫折していく人は星の数ほどいるでしょう。しかし彼女は夢にも思わなかったステージに立つことになる。しかもタイアップ付きのメジャー・デビューだ。しかし、ここからが大変、大きなプレッシャーとの戦いと、過酷なプロモーション。続く!

取材・文:横田一郎
撮影:萩庭桂太