企業家としてもビジネスマンとしても、確実に成功できるキャリアとスキルの持ち主。そんな西平さんが、現在、社会貢献活動に取り組んでいる背景には、こんな思いも含まれている。

「40歳になったとき、ふと“これからは誰もが自分の出来る範囲で社会貢献をするべきだ”と思ったんです。私自身、若い頃は自分のことだけで精一杯。だけど、40代という“大人”の年齢になったなら、これまで自分がビジネスで培ってきたスキルを、もっと世のため、人のために活かしていくべきじゃないか、って」

 そう考えるようになったのは、青春時代を日本が右肩上がりの時代に過ごしたという理由も大きい。

「私たちが若い頃、日本はとても元気だったでしょう。それが、今やすっかりパワーを失っている。ならば、大人になった私たちが、自分たちの力でもう一度、日本を元気にしようよ、と。今、私が取り組んでいる、動物たちと幸せに暮らせる環境作りもそのひとつと考えています。社会全体がもっとハッピーになれば、その幸せが自分にも返ってくると思うから」

 また、社会を活性化するという点に関しては、ビジネスも社会貢献も目指しているところは変わらないと、西平さんは考えている。

「数年後にはアニドネを公益法人化して、スタッフも雇いたい。日本のNPO活動は奉仕的な色合いが強く、どんなに素晴らしい活動をしていても最低限の年収しか得られません。それではやはり活動にも限界がある。アメリカのように非営利組織にも幅広い人材が集まり、“世のため、人のため”に様々な事業を展開していける仕組みを作りたい。アニドネをその先鋒にするのが、目下の私の目標です」

 お洒落なステーショナリーが大好きで、流行りの服やアクセサリーも身につける。そんな自らの日常を楽しみながら、明るく前向きにチャリティ活動に取り組んでいる西平さん。その姿は、私たちに「一歩を踏み出す」勇気を与えてくれる。

  • 出演:西平衣里(にしひら・えり)

    1969年、福岡県生まれ。短大卒業後、(株)リクルートに勤務。中途採用情報誌や結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊に携わる。その後、ゼクシィ・ブランドのムック版『海外ウエディング』『インテリア』『ドレス』に編集制作、クリエイティブディレクターとして携わる。’03年に(株)リクルートを退社。10年に一般社団法人『アニマル・ドネーション』を設立。11年7月より、動物関連限定のオンライン寄付サイトをオープン。
    『アニマル・ドネーション』公式サイト http://www.animaldonation.org
    『INUTO(イヌト)』公式サイト http://inuto.jp

  • 取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。

撮影協力:Dog Shelter(ドッグシェルター) http://dogshelter.jp
撮影協力:マーキュリードッグ http://www.mercury-dog.com
撮影:萩庭桂太