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 私が西平さんの活動に興味を持ったのは、単に「動物好き」という理由だけではない。彼女が手掛けているチャリティ活動が、一般にイメージする“社会貢献”には見られない、ユニークな発想と楽しいアイディアに満ちているものばかりだったからだ。

 オンラインで誰もが手軽に寄付できるサイトを立ち上げただけでなく、わずか2年の間に、その活動は様々な方面に広がっている。そのひとつが「+イイコト」プロジェクト。ペットショップや動物病院などで販売されている犬猫用のオヤツに寄付をつけ、ユーザーがその商品を買うたびに10円がアニドネに寄付される仕組みも作った。このシステムは協賛した企業にも、大いにプラス。寄付をつけたことで問題意識の高い消費者にアピールし、その商品の売上げ個数も自ずとアップするからだ。

「なんて素敵なアイディア! これなら募金に抵抗のあるお客さまも、気軽にチャリティに参加することが出来ますからね。実際に手に取って下さる方も多く、うちのサロンも大いに応援させてもらっています」

 この寄付つきオヤツを店頭に置いている、ドッググッズ販売&トリミングショップ『マーキュリードッグ』の縣由佳子店長は、そう語る。

 さらに、商品代金の一部が寄付につながる自動販売機の設置や、すべてのアイテムに5%の寄付がついているペットグッズの通販サイト「INUTO(イヌト)」の立ち上げにも参加。さらには自動車やハウスメーカーと協賛し、「動物たちと幸せに暮らせるライフスタイル」を提案する商品も企画中。

「私が目指しているのは、誰もが楽しく参加できるチャリティ活動です。動物好きの人が興味を持って下さるのは、ある意味、あたりまえのこと。さらに活動を広げていくためには、動物に関心のない人も“いいね!”と言ってくれるようなプランが必要なんですよ」

 なるほど、さすがにビジネス畑で鍛えた人ならではの発想だ。そのフットワークの軽さと豊富なアイディアを武器にすれば、起業家としても成功出来たはず。なのになぜ、西平さんは”社会貢献”という道を選んだのだろう?

  • 出演:西平衣里(にしひら・えり)

    1969年、福岡県生まれ。短大卒業後、(株)リクルートに勤務。中途採用情報誌や結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊に携わる。その後、ゼクシィ・ブランドのムック版『海外ウエディング』『インテリア』『ドレス』に編集制作、クリエイティブディレクターとして携わる。’03年に(株)リクルートを退社。10年に一般社団法人『アニマル・ドネーション』を設立。11年7月より、動物関連限定のオンライン寄付サイトをオープン。
    『アニマル・ドネーション』公式サイト http://www.animaldonation.org
    『INUTO(イヌト)』公式サイト http://inuto.jp

  • 取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。

撮影協力:Dog Shelter(ドッグシェルター) http://dogshelter.jp
撮影協力:マーキュリードッグ http://www.mercury-dog.com
撮影:萩庭桂太