2011年7月のサイト・オープンから約2年。現在、『アニドネ』が寄付先として紹介している動物愛護団体は10カ所。サイトを通じて、これまでに各団体に寄付された総額は1200万円を超えた。

 この寄付金で、実際にどれだけの動物たちが救われているのか。西平さんと一緒に、寄付先のひとつである動物保護団体「Dog Shelter(ドッグシェルター)」を訪ねてみた。この団体は、動物愛護センターに収容され、殺処分される期限がきても引き取り手のない犬たちをシェルターに保護し、新しい家族を探すボランティア活動を行っている。

「愛護センターからピックアップした後、動物病院で検査を受けたり、ワクチン接種、避妊や去勢手術をしてもらいます。その後、里親さんが見つかるまでのフード代や生活費をすべて含めると、1頭につき約4~5万円の費用がかかります。本音を言えば、センターに収容されているすべての犬たちを救いたい。だけど、資金がなければ保護活動は出来ません。アニドネさん経由でみなさんからの寄付をいただけるようになって、本当に助かっています」

 シェルターの代表を務める片岡美奈さんは、そう語ってくれた。彼女の傍らで無邪気に遊んでいるイングリッシュ・セッターやビーグルたちも、その資金がなければ、今、ここにはいなかったはず。そんな寄付先からの感謝の声は西平さんにとっても大きな励みとなっている。

「1頭5万円でひとつの命が救えるということは、アニドネが50万円の寄付金を集めれば10頭の命が救える計算。自分のやっていることがダイレクトに動物たちの幸せにつながっている。まさに、この活動をやっていて良かったと感じる瞬間です。今、私がやっていることは純然たるチャリティ活動で、1円の利益にもなりません。ですが、そんな嬉しい声を聞くたびに、億単位のお金を動かしていたリクルート時代とは、また違った喜びを実感するんです」

 さらにもうひとつ、「アニドネ」の活動を始めてから、西平さんには嬉しい出来事が。以前から望んでいた子どもを授かり、42歳で可愛い男の子のママになったのだ。出産は、サイトのオープンからわずか2カ月後。

「ずっと欲しいと思っていたのに出来なくて、“なぜ、このタイミングで?”と不思議でした。でも、自分が“これ!”と思うことに全力を注いでいたご褒美に、神様が息子を授けてくれたのかもしれません」

 サイトのスタートと初めての子育てが重なって、「今は毎日が闘いのよう」。2歳になる長男は、このところ夜泣きも頻繁だ。夜中にあやしていると2、3時間しか眠れない日もザラだと言う。

「けれど、息子が日々、成長していく姿が私の励みにもなっています。昨日まで赤ちゃんだったのが、次第に歩くようになり、言葉を話せるようになっていく。その成長ぶりを見ていると、“ママも頑張るからね!”と力が沸いてくるんです」

 母としてもフル回転。そんな西平さんが、今、新たに取り組んでいるチャリティ活動とは?

  • 出演:西平衣里(にしひら・えり)

    1969年、福岡県生まれ。短大卒業後、(株)リクルートに勤務。中途採用情報誌や結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊に携わる。その後、ゼクシィ・ブランドのムック版『海外ウエディング』『インテリア』『ドレス』に編集制作、クリエイティブディレクターとして携わる。’03年に(株)リクルートを退社。10年に一般社団法人『アニマル・ドネーション』を設立。11年7月より、動物関連限定のオンライン寄付サイトをオープン。
    『アニマル・ドネーション』公式サイト http://www.animaldonation.org
    『INUTO(イヌト)』公式サイト http://inuto.jp

  • 取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。

撮影協力:Dog Shelter(ドッグシェルター) http://dogshelter.jp
撮影協力:マーキュリードッグ http://www.mercury-dog.com
撮影:萩庭桂太