「子どもの頃から動物が大好きで、実家にいた頃は、数えきれないほどの小鳥や猫を飼っていました。大人になってからは、犬を飼うのが長年の夢。だけど、若い頃は仕事で大忙し。毎晩、終電で帰宅するような日々だったので、自分でペットを飼うなんて夢のまた夢だったんです」

 実は西平さん、短大卒業後に就職したのはパワフルな仕事人間が集まるリクルート。西平さん自身も、結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊を始め、編集や広告の仕事をバリバリとこなしてきた。31歳で結婚した頃も身体を壊すほど働いて、朝晩の散歩が欠かせない犬を飼うことは「絶対に無理」と諦めていた。

 そんな西平さんのもとに、1匹のトイプードルがやってきたのが36歳のとき。34歳でリクルートを退社し、ようやく家族の一員として愛犬のトゥルーちゃんを迎えることが出来たのだ。

「元気でやんちゃ。もう可愛くて可愛くて。だけど、トゥルーとの生活を通して、日本の動物たちが置かれている悲惨な現状も知ったんです。ちょうどその頃、ある愛犬雑誌が主催した保健所見学のセミナーに参加して、年間17万頭以上もの犬や猫の殺処分が行われていると聞き、言いようのないショックを受けました。1日に換算すると約560頭。しかも、“引っ越しするから”“吠えるから”などという人間の勝手な都合で、罪もない動物たちの命が奪われているなんて」

 そんな驚くべき数字に衝撃を受けた西平さんの足元に、1匹の猫が人恋しげにすり寄ってきた。「この猫は?」と保健所の職員に尋ねたところ、「今朝、ひとり暮らしのおじいさんが泣く泣く連れてきた。病気で入院することになったので、誰もこの猫の面倒をみられないから」と。

「その話を聞いたとき、なんて悲しいことだろうって。おじいさんも猫もあまりに気の毒。なんとかできないものだろうか、と」

 その思いが西平さんの心に火をつけた。当初は、動物たちが置かれたこの悲惨な現状を世間に広く知らせるサイトを立ち上げようと考えた。だが、問題を掘り下げていくうちに、こうした不幸な犬猫たちを救うための活動をしている団体がいくつも存在することを知る。そして、どこの団体も慢性的に活動資金が足りていないことも。

「だったら、その資金をみんなから寄付してもらえるシステムを作ろう」

 そんなアイディアが、西平さんの脳裏に浮かんだ。そして、そのひらめきが、約1年の月日をかけて『アニマル・ドネーション』という寄付サイトにつながったのだ。

  • 出演:西平衣里(にしひら・えり)

    1969年、福岡県生まれ。短大卒業後、(株)リクルートに勤務。中途採用情報誌や結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊に携わる。その後、ゼクシィ・ブランドのムック版『海外ウエディング』『インテリア』『ドレス』に編集制作、クリエイティブディレクターとして携わる。’03年に(株)リクルートを退社。10年に一般社団法人『アニマル・ドネーション』を設立。11年7月より、動物関連限定のオンライン寄付サイトをオープン。
    『アニマル・ドネーション』公式サイト http://www.animaldonation.org
    『INUTO(イヌト)』公式サイト http://inuto.jp

  • 取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。

撮影協力:Dog Shelter(ドッグシェルター) http://dogshelter.jp
撮影協力:マーキュリードッグ http://www.mercury-dog.com
撮影:萩庭桂太