そもそもクロマチック・ハーモニカってなに?

 解説しましょう。スティービー・ワンダーが吹いているやつです。名曲「Isn’t She Lovely」のハーモニカ・ソロなんかが一番わかりやすいかな。たった16の穴とスライド・レバーの操作だけで4オクターブ+2音という広い音域が出せる楽器。ところがこの楽器、専門の演奏家となるとほとんどいない。日本では数えるほど。海外でも有名な演奏家はトゥーツ・シールマンスっていうおじいちゃん(巨匠中の巨匠)が一人いるだけ。

 ところが、台湾、中国、マレーシアを中心に東南アジアではかなり盛り上がっているメジャーな楽器なのである。

「去年の8月にマレーシアで開催されたクロマチック・ハーモニカのアジア大会に審査員として行ってきました。子供から大人まで何千人っていう人が集まってハーモニカを吹くんです。もの凄いハーモニカ熱で、私が演奏すると『キャー!』ってまるでアイドルのコンサートでも観るような黄色い歓声が飛んできます。ちょっと恥ずかしかったですけど」

 確かに彼女はアイドル並みにカワイイ。どこぞのアイドル集団の中にいてもおかしくない。一方、日本では楽器の存在すらあまり知られていない。彼女はその現状もなんとかしたいと頑張っているのだ。東京と関西でクロマチック・ハーモニカ教室を開き、教えている。

「サックスよりも手軽、どこでも練習できて、楽器の値段も安い。そういった理由で始めてくださる方もいますが、会社をリタイアされて、これから何か趣味を持ちたいという方がほとんど。確かにそういった方にも最適な楽器だと思います。ところが私に近い世代の方がほとんどいないんです。私が演奏する事で、もっと様々な世代の方々に興味を持ってくれればと思っています」

 実際にこの楽器はどれくらい難しいのだろうか? そこそこ練習すればすぐに吹けるようになるものなのだろうか?

  • 出演:南 里沙

    1987年4月9日生まれ。神戸女学院大学音楽学部音楽学科オーボエ専攻卒業。大学在学中にクロマチック・ハーモニカに出会い、徳永延生氏に師事。2009年、F.I.H.ドイツ世界大会オーブンカテゴリー準優勝。2010年、第30回F.I.H.日本ハーモニカコンクール3部門にて優勝。ジャズ・ポップス部門において、同大会の総合グランプリ受賞。第8回アジア太平洋ハーモニカ大会クロマチックソロオープンにて優勝。2011年、中国・上海音楽庁で演奏、またいずみホールにてウクライナ国立キエフ交響楽団と共演。2012年、ウクライナにてISNO新交響楽団と共演。

    メジャーデビュー“Mint Tea”ツアーは7月16日東京・六本木STB、18日大阪・難波Flamingo the Arusha、“Mint Tea”スペシャルコンサートは26日名古屋・名駅Rosenstrauss
    詳しくは南里沙オフィシャルサイト http://southrachel.p1.weblife.me/

スタイリスト:白山美由紀
取材・文:横田一郎
衣装協力:ZURI
撮影:萩庭桂太