29歳。遊びたい盛りではないかとも思うが、田代万里生のプライベートもちょっと気になる。

「去年まで、ミュージカルの仕事がびっちり詰まっていて、プライベートな時間がないほど忙しかったんです。昼夜公演の後、夜11時から朝の5時まで今度はレコーディング、その後、9時からはオーケストラと音合わせなんていうこともあって」

 ほんとかな~とも思うが、まあ信用してあげよう。でも一応、こうふってみた。「彼女がいたら会えなくて大変ねえ」。

 するとちょっと他人事のようにこんな答えが返ってきた。

「周囲もみんな自分の世界観をもっている人たちだから。うまくやってますよ」

 それ以上聴くとマネージャーさんに嫌われそう(もうたぶん嫌われています)なので、この辺にしておこう。一人の時間はどんな風に過ごしているのかと尋ねると、今度は元気にこんな答えが返ってきた。

「最近、念願のクロスバイク(スポーツタイプの自転車)を買ったんです! 今週だけで100キロは走りました。丸々一日オフの日は、一日で50キロ以上走ることもあります。都内ならどこへでも行っちゃいますよ」

 中学時代には工事現場に突っ込んでケガをしたことがある。禁断の自転車だった。

「乗りたいけど、ずーっと我慢してたんです。でも声楽の師匠や祖父が昔からロードバイク乗りで、昨年田舎に帰った時に祖父が使わなくなったロードバイクを借りて一日中サイクリングしていたら、もう最高に気持ちが良くって。高校時代毎日往復二時間かけて普通の自転車で通学していたので、スポーツとしてもリフレッシュとしても、自転車は心身共に性に合うみたいです。少しずつカスタマイズしながら、今では完全に大切な愛車です。ぼくは一人っ子なので、一人の時間を楽しむのもうまいんですよ」

 じっとしていられないという顔が、ようやく29歳らしく見えてきた。「ヘルメットはかぶってね」と言うと「はいっ」と無邪気な笑顔になった。

  • 出演:田代万里生

    1984年長崎県生まれ、埼玉育ち。東京芸術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。埼玉県立大宮光陵高校音楽科声楽専攻(テノール)卒業。ピアノ講師である母のもとで3歳からピアノを学び、いくつかの楽器を経て15歳から声楽の道へ。大学在学中に本格オペラデビューし、2007年にソリストグループ「ESCOLTA」(エスコルタ)でCDデビュー、定期的にコンサートを行っている。7月17日にはミニアルバム『ひとつの空』を発売。2009年からはミュージカルにも多数進出し、好評を得る。6月5~6日、Bunkamura オーチャードホールで開催される『ワイルドホーン・メロディーズ』にも出演する。
    公式ブログ http://ameblo.jp/mario-capriccio/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:藤井康弘 http://www.yasumakeup.com/
撮影:萩庭桂太