騙されがちな性格
加藤ゆり
- Magazine ID: 1250
- Posted: 2013.04.23
1年生でミス東大になった。そのプレッシャーは傍からの想像を遥かに超えるものがあったようだ。
「私、田舎者で、大学で初めて東京に出てきて、ミス東大になって。それで、きれいにならなくちゃ、と思ったんです。そのプレッシャーって大きくて、押しつぶされそうでした。あるとき、渋谷のスクランブル交差点で信号待ちをしていたら、きれいなおねえさんに声をかけられたんです……」
そのおねえさんについていくと、そこはある雑居ビルの一室だった。おいおい、なんでついていくの、そんなとこまで……。
「そこで美顔器を買うように勧められたんです。そこの専用化粧品を使ってエステをしてもらったら、自分がものすごく変わった気持ちがしました。その後でご愛用者ノートを見せてもらったんですけど、そこには、いろんな人が『この美顔器に出会って人生変わりました!』とか書いているんです。それで、ああ、この一員になりたい! と思ってしまいました」
美顔器は20万円ほどした。少しずつローンを払えばいいといわれ、契約した。エステ券が2枚ついていたので、大学の友達も誘った。
「そうしたら、そのエステ券を見た友達が『ゆりちゃん、騙されてるよ!』って言うんです。ちょっとずつ返すローンも、ものすごく利子がつくので、何年たっても返せないようになっていて。それで、友達に手伝ってもらって、クーリングオフをしました。東京は、つくづく怖いところだと思いました」
ついでに書くと、その後、高額な浄水器も買いそうになったことがあるという。
「でもキャンセルできました。いっぱい騙されそうになっているけど、すごい被害はないんです。ぎりぎりのところで誰かに救われている感じで、ありがたいですね……。私、結局、ミス東大というのに釣り合う自分になろうと、必死だったんだと思います。だからミスであることを何も謳歌できませんでした」
大丈夫だろうか、と私は不安になった。
気持ちいいほどの無防備さ。しかしそれも間違いなく、この人の魅力だ。彼女は本当に一生懸命で、東京で生きるということに対してとても純粋なのである。
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出演:加藤ゆり
1986年、三重県四日市市生まれ。2005年、東京大学理科二類に入学、1年生のとき、ミス東大に選ばれる。卒業後もタレントとして活動し、09年に日本テレビ『おもいッきりDON!』にレギュラー出演するなどテレビ、ラジオに多数出演。現在は日本テレビ『ZIP!』に週2~3回登場するレギュラーレポーターを務める。
所属事務所公式サイト http://www.discovery-e.co.jp/model/00574.html
オフィシャルブログ http://www.diamondblog.jp/yuri_kato/ -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太