ミュージシャンズ・ミュージシャン
吉田美奈子
- Magazine ID: 1236
- Posted: 2013.03.22
「ミュージシャンズ・ミュージシャン」
吉田美奈子はそう呼ばれている。
「ミュージシャンの中でも特に突き抜けたミュージシャン」という意味である。圧倒的な歌唱力とソングライティングゆえ、多くのミュージシャンが共演を熱望する。ライヴで、テレビの音楽番組で、そんなシーンをあまた見てきた。どの組み合わせも、吉田のすごさを再認識させられるものばかりだった。
しかし、それでも吉田本人は自分を「発展途上」と言う。
「ライヴを続けていると、声を出す時の口の開け方や、圧のかけかたで、オルガンの音の中に声が溶けたり、浮き立ったりします。まだ可能性があると思えるんです。今回のツアーも前半と後半ではまったく違う音楽になっていることへの期待があります」
「LIBERTY」という曲がある。ゴスペル調の厳かな楽曲だ。
「『LIBERTY』は身体の中のエネルギーを凝縮させて一気に吐き出すような曲。5曲分くらいのエネルギーを使います」
この曲を歌う時、ステージから客席へ向かって吉田の声の道筋が見えるように思える。客席の空気が変わっていくように思える。吉田の「LIBERTY」を1度聴いてしまうと、ほかのシンガーの歌では満足できなくなる。
この1曲を聴くだけの目的でも「~TRIM~ CARAVAN TOUR 2013 吉田美奈子 & 河合代介 meets 沼澤尚」を観る価値は十分だ。
音楽は、送り手側と受け手側が1つになって作品を作り上げる。
「音楽は、聴いた時だけではなく、時を経て思い出して、作者や演奏者の思いと離れたところで成就するものの気がします。そうなれる作品をお届けし続けたいですね」
「~TRIM~ CARAVAN TOUR 2013 吉田美奈子 & 河合代介 meets 沼澤尚」
3月21日(木) 宮崎、25日(月) 長崎、26日(火) 博多、4月5日(金)・6日(土) 東京目黒、10日(水) 金沢、5月2日(木) 横浜、11日(土) 札幌、16日(木) 仙台、21日(火) 名古屋、24日(金) 大阪、6月1日(土) 広島、5日(水) 神戸、6日(木) 京都、13日(木)・14日(金) 東京目黒など全国43か所
詳細は http://www.la-la-bells.com/ をご参照ください
※ツアー会場ではTRIMのスタジオライヴDVDを発売(3,500円)。
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出演:吉田美奈子
音楽家。1953年生まれ。当時交流を持った細野晴臣(現・YMO)や松本隆(現・作詞家)などに影響を受け、楽曲制作を始める。間もなくシンガー・ソング・ライターとして、ライヴ中心の音楽活動を開始。1973年、アルバム『扉の冬』で本格的にデビューの後、CM音楽(1985年・第33回「カンヌ国際広告映画祭」銀賞受賞)制作や、他の歌手などへの楽曲提供(現在までに130曲を越える)、プロデュース、アレンジを含む一人多重録音によるコーラス歌唱等のスタジオ・ワークも行っている。2012年1月現在、オリジナル・アルバム19作品(ライヴ、ベスト、シングル、企画盤は除く)、コラボ・アルバム3作品、ライヴ映像収録DVD等を4作品リリースしている。ジャンルを取り払った自由自在な音楽活動は、クオリティーを保ちながらも個性を発揮するミュージシャンとして、多方面から共演を熱望され、常に高い評価を得ている。
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取材・文:神舘和典
1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。
新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
撮影:萩庭桂太