「~TRIM~ CARAVAN TOUR 2013 吉田美奈子 & 河合代介 meets 沼澤尚」で、吉田美奈子が旅をともにする河合代介と沼澤尚は腕利きのミュージシャンだ。

 2004年に吉田はオルガンプレイヤーの河合と出会った。河合は、吉田のバンドにいたピアニスト、倉田信雄のアシスタントだったのだ。

「こんなにうまいオルガニストが日本にいたんだ!」

 河合の演奏を聴いて、吉田は驚いた。バンドに誘い、デュオも試みた。

「ライヴではオリジナルを意識しすぎるタイプと一緒にやるのは難しいんですけれど、彼はすぐに理解して演奏してくれました」

 河合はジャズ史の名オルガニスト、ジミー・スミスに心酔している。

「ジャズは概して系統だった演奏が多いらしい。でも、河合さんは自由度の高い演奏にもすぐに慣れてすごく楽しかった」

 一方ドラムスの沼澤は1990年代半ばに一時期吉田のバンドに参加していた。それ以前、沼澤は20代でアメリカへ渡り、チャカ・カーンやボビー・ウーマックのバンドで演奏したキャリアを持つ。

「ボビー・ウーマックの来日公演を観に行ったら、そこで叩いていたのがタカちゃんでした。その後帰国した噂を耳にしてバンドに誘ったのが最初です。タカちゃんほど、バンドの中で鳴っている音をしっかり聴いて演奏するドラマーを私はほかに知りません。音だけではなく、ほかのメンバーのかすかなアイコンタクトも見逃しません。それが演奏する音楽を質の高いものにしてくれます」

 沼澤がアメリカ時代にセッションで培ったものだ。

「向こうでは急にオーディションに呼ばれて、すぐに、10曲叩け! みたいなケースが多いそうで、彼はそういう環境で鍛え上げられたドラマーです。いつも最初に譜面が頭に入ります」

 沼澤はいまや日本を代表するドラマーの1人だ。

 これだけのメンバーが演奏する音が客席数数百のコンパクトな会場で聴けるチャンスはほかにはない。おそらく、ツアーではどの会場もステージが近く、3人が自分だけのために演奏してくれると思えるような環境を体験できるはずだ。

「~TRIM~ CARAVAN TOUR 2013 吉田美奈子 & 河合代介 meets 沼澤尚」

3月21日(木) 宮崎、25日(月) 長崎、26日(火) 博多、4月5日(金)・6日(土) 東京目黒、10日(水) 金沢、5月2日(木) 横浜、11日(土) 札幌、16日(木) 仙台、21日(火) 名古屋、24日(金) 大阪、6月1日(土) 広島、5日(水) 神戸、6日(木) 京都、13日(木)・14日(金) 東京目黒など全国43か所

詳細は http://www.la-la-bells.com/ をご参照ください
※ツアー会場ではTRIMのスタジオライヴDVDを発売(3,500円)。

  • 出演:吉田美奈子

    音楽家。1953年生まれ。当時交流を持った細野晴臣(現・YMO)や松本隆(現・作詞家)などに影響を受け、楽曲制作を始める。間もなくシンガー・ソング・ライターとして、ライヴ中心の音楽活動を開始。1973年、アルバム『扉の冬』で本格的にデビューの後、CM音楽(1985年・第33回「カンヌ国際広告映画祭」銀賞受賞)制作や、他の歌手などへの楽曲提供(現在までに130曲を越える)、プロデュース、アレンジを含む一人多重録音によるコーラス歌唱等のスタジオ・ワークも行っている。2012年1月現在、オリジナル・アルバム19作品(ライヴ、ベスト、シングル、企画盤は除く)、コラボ・アルバム3作品、ライヴ映像収録DVD等を4作品リリースしている。ジャンルを取り払った自由自在な音楽活動は、クオリティーを保ちながらも個性を発揮するミュージシャンとして、多方面から共演を熱望され、常に高い評価を得ている。

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太