聖母マリアのような菜々佳ちゃんは、どんな風に育ったのであろうか。そしてなぜ、そんな純潔のままに芸能界にいるのであろうか。

「ひとりっ子だったので、鳥かごのなかにいるように育ちました」

 お嬢様育ち。でも幼い頃から、芸能界に入ろうという気持ちだったと言う。

「物心ついたときから、私は芸能界に入って女優になってそこで何かを残す人なんだ、という根拠のない自信に満ちあふれていました。その割には、まだ売れてないんですけど(笑)」

 とりあえずなんでも習っておきたいと、6歳の頃にクラシックバレエを始めた。

「自分からやりたいと言ったのに、習い始めると私は先生に反抗的になってしまいました。先生はさらに一生懸命教えて下さろうとして、ずいぶんと厳しくされたので、もっと反抗してしまった。レッスンは嫌だったけど、ひとつの踊りが完成するのは嬉しかったですね。今は懐かしくもあり、またちょっと通ってみたいとも思っています」

 日常生活ではかなり不思議な子どもだったようだ。

「体育座りのまま階段から落ちたらどうなるのかなと思って、試しに落ちて目を回したり、車道をスキップしていたらバイクに跳ねられたり、ブランコを180度になるまでがんばってこいでそのままジャンプしてしまったり。実は子どもの頃に3回も救急車に乗っているんです。4回目にケガをしたときは、さすがに4回乗るのは縁起が悪いからと、母親が車で病院に連れていってくれました」

 中1からモデルクラブに所属したが、今ひとつぱっとしなかった。

「私は洋服の善し悪しがわからなくて、当時は興味のかけらもなかった。洋服=大事なところを隠すための布、くらいの気持ちしかもてなかったんですね。それではモデルとしては全然ダメじゃないか、という葛藤があったんです。そこで真っ向から女優を目指したんですが、オーディションにはまったく受かりませんでした」

 このままではただの変わったお嬢様である。しかし彼女の道を開いた言葉は、なんと憲法にあったのであった。

  • 出演:黒部菜々佳

    1989年東京都生まれ。13歳からモデルとして活動し、2012年、学習院大学在学中に準ミスインターナショナルジャパンに選ばれる。現在、東宝芸能に所属。初主演映画『雫』がこの春、東京イタリア文化会館などで公開される。
    問い合わせ先・東宝芸能(tel: 03-3504-0789 mail: nagano@toho-ent.co.jp

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太