捨てなかった想い
HUKUROH
- Magazine ID: 1201
- Posted: 2013.01.18
「一緒にやっていて楽しいんですよ」
「音楽が好きなんです」
そんな言葉がとても自然に、HUKUROHの3人それぞれの口から出てきた。そう聞くたびに、言葉が胸に迫って、私はなぜだか涙ぐみそうになる。なぜなんだろう。おそらくそれは、彼らがそれぞれの人生を長らく懸命に生きながらも、決して捨てることのなかった音楽への熱い想いがそこにあることを感じとるからに違いない。
住出が言う。
「3人でやる面白さは、いい加減なときと引き締まったときの、寒暖の差、みたいなものです」
滝が言う。
「HUKUROHのいいところはね、いきなり何かが動き始めて、前に前にっていう気持ちでがんがんやっているところです。すごく刺激があるし、それはぶつかることもあるけど、それも含めて、いいと思う」
矢沢が言う。
「音楽を続けようと思ったことはありません。僕にとっては枕みたいなもの。あって普通。ないと違和感がある。巷間に言うほどすごいものでもない。生き死にには役に立ちませんから。でも音楽には結果がある」
クリスマスイブのライブは、満員の客席も仲間内のような笑いの絶えない空間だった。
新曲を押さえつつ『That’s the way』や住出がソロで聴かせる『ギャランドゥ』まで、バラエティあふれる選曲が楽しかった。滝は『You’re so beautiful』を歌った。帰り際、よかったですよ、と声をかけると、こんな言葉が返ってきた。
「30前かなあ。僕はやっぱり歌い手としてやっていこうと、改めて思った曲なんです」
扉を開けると、その夜の馬車道は本当に寒かった。けれど、あったかいクリスマスイブを過ごさせてもらった、と心から思った。
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出演:HUKUROH
元シグナルで今や国内外でコンサート活動を続けるソロギタリストである住出勝則、アリスのドラマーとして知られ、数々の有名アーティストとセッションする矢沢透、『南回帰線』のヒットをもち、現在はR&Bシンガーとして横浜を中心に活動する滝ともはるの3人が結成したユニット。1月23日デビューアルバム「HUKUROH」を発売。1月20日に東京・目黒ブルースアレイ、2月14日に大阪umeda AKASOなどでライブも開催。
http://www.hukuroh.com/ -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影協力:パラダイスカフェ http://www.paradisecafe2001.com/access.html
撮影:萩庭桂太