演奏料、1曲300円
HUKUROH
- Magazine ID: 1198
- Posted: 2013.01.15
今回の取材は、昨年12月24、25日に行った。クリスマスどんぴしゃである。48歳にもなってクリスマスもないのであるが、「ああ、仕事かあ、クリスマスなのにい」とつぶやくと、萩庭桂太は「クリスマス? なんのこっちゃ」という顔をしてからおもむろに、
「日本人なら、むしろ天皇誕生日の23日を祝うべきだろ」
とのたまう。
「は、はあ、……どうぞ」
というわけでクリスマスイブ。我々は横浜・馬車道のパラダイスカフェにいた。まず、1人ずつ撮影することになった。
住出勝則さんはソロのギタリストとしても、今や相当世界的に有名な人である。なんといってもあのタック&パティに「一緒にツアーを回ろう」と本気で言われというのだから。
「ええっ。なんで回らなかったんですか!」と聞くと、「おそれおおい」と大らかに笑うばかり。この人はこんなにギターが上手いのに、なぜこんなにシャイなのであろうか。想像するに、ギタリストとして極めるべき、想像もつかないような高みがあって、常にそこに向かって途方もない精進を続ける少年のような人なのではあるまいか。実際、96年にオーストラリアに渡ってから、1日10時間を3年間、ギターの練習に費やしたのだという。
「最初はバーみたいなところで弾き始めたんだけど、チャージが一曲300円くらいだったかな。この金額はビール1杯より安いんだけど、そのくらいの金額の頃はまだよかった。これがビールの値段を超える頃が大変だったよ。リクエストカードに『GO HOME』と書かれたりね。人種差別もあるし。日本人だというだけで水をかけられたり。なんかこう、岸壁で1000人くらいの人に押されてるみたいな、そんな状況が何年も続いた気がする」
その後、ソロギタリストとしてアメリカ、カナダ、ドイツ、中国、台湾、香港とツアーを重ねるアーティストとなった。そして、また、今、なぜバンドなのだろう。
「ソロを十何年やってきて、またグループのよさをしみじみ感じるんです。それとこのギターとパーカッションっていう、フォークの編成の懐かしさですね。何か日本人の琴線にふれるものがあるんじゃないかな。特に僕らの年齢くらいの人たちはAm→Em→D7 って、きたらセブンスのコードでドキッとするでしょう? DNAにしみついているような(笑)」
フォークという言葉に、滝ともはるも反応した。
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出演:HUKUROH
元シグナルで今や国内外でコンサート活動を続けるソロギタリストである住出勝則、アリスのドラマーとして知られ、数々の有名アーティストとセッションする矢沢透、『南回帰線』のヒットをもち、現在はR&Bシンガーとして横浜を中心に活動する滝ともはるの3人が結成したユニット。1月23日デビューアルバム「HUKUROH」を発売。1月20日に東京・目黒ブルースアレイ、2月14日に大阪umeda AKASOなどでライブも開催。
http://www.hukuroh.com/ -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太