滝ともはるは言う。

「久しぶりに会ったら、住ちゃん(住出)がすごいギタリストになっていたんですよ。で、またフォークやろうよ、と言う。ジャン、というアコースティックギターでストロークしてみたら、心が浮き立つような感じがあるんですよね。この王道の楽器を使いながら、何か新しいことができたらいいなあと思いました」

 滝も堀内孝雄とのヒット曲『南回帰線』以降は、地道な音楽活動を続けてきた。結婚し、子どもができ、家族を養うことが最優先の生活になる。日雇いで工事現場で働き、音楽の仕事があればそちらへ出向く。40代でもそんな生活を続けていた。そこへ舞い込んだのが、横浜のディスコバンドでR&Bを歌わないかという話だった。

「ぼくは九州出身だけど、横浜という街のローカルなあったかさにフィットしたんやね。自然発生的にまた音楽の仕事がやってきて、それも横浜の街が僕に『歌いなさい』と言うてくれたような気がしてね。50曲くらい楽譜を渡されて、明日よろしく、と(笑)。必死で覚えましたよ」

 もともと、歌唱力のある人だ。横浜で音楽の仕事が再び中心になった。2001年、ホームグラウンドとなるライブハウス「パラダイスカフェ」をオープン。上田正樹、故・桑名正博、BOROらが出演して人気の場所になった。

「先週も上田さん来てくれて盛り上がったよ。ここがあって、またHUKUROHにもつながったし。良かったと思います。でもHUKUROHでね、僕、ハモるの、初めてなんですよ。上歌うとか下歌うとかいうところで、僕、真ん中歌ってしまう(笑)。どっかで許してもらってるんかな。バンドはいいね」

 にっこり笑った白い顎髭の顔が、優しかった。

  • 出演:HUKUROH

    元シグナルで今や国内外でコンサート活動を続けるソロギタリストである住出勝則、アリスのドラマーとして知られ、数々の有名アーティストとセッションする矢沢透、『南回帰線』のヒットをもち、現在はR&Bシンガーとして横浜を中心に活動する滝ともはるの3人が結成したユニット。1月23日デビューアルバム「HUKUROH」を発売。1月20日に東京・目黒ブルースアレイ、2月14日に大阪umeda AKASOなどでライブも開催。
    http://www.hukuroh.com/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影協力:馬車道十番館
撮影:萩庭桂太