ホセ・ジェイムズを最初に見いだしたプロデューサーはロンドン在住のDJジャイルス・ピーターソンである。J-WAVEが彼の番組をオンエアしていた際に、私はジャイルスにインタビューする機会があり、その時にホセのことを教えられた。ホセの今回の来日も、その時に知り合ったSOIL&"PIMP"SESSIONS(ソイル&ピンプ・セッションズ)という日本のバンドとのコラボレーションが目的であった。すべてがジャイルスつながりなのである。

「これからSOIL&"PIMP"SESSIONSとホセがレコーディングのためにセッションするんですが、いらっしゃいますか」

 マリちゃんがそう言うので、ならばと、萩庭桂太と私はビクタースタジオに乗り込んだ。SOIL&"PIMP"SESSIONSのメンバーは一音一音にかなりうるさい人たちらしい。彼らのうちの1人がホセとの出会いについて語ってくれた。

「ニューヨークのマリタイムホテルの下にあるボールルームというところでホセが歌っているのに遭遇したんです。ジャイルス・ピーターソンがもっているレーベル、ブラウンズウッドの仲間でもあり、うちのバンドのメンバーがやっているピアノ・トリオ、J.A.M(ジャム)とホセがセッションしているというつながりもあります。ホセって人間もすごいし、歌も当然いい」

 さらにこの日、彼らは未来のプロジェクトのために、スタンダードの名曲『Summer Time』の新たなアレンジにも挑戦していた。

 リハが始まると、またその音の新しさに我々は言葉を失った。ジャズらしいメロディでありながら、アレンジは飛び跳ねていて戻って来ないかのようで、しかもちゃんと寄り添っていた。ホセは言った。

「自分のバンドもあるけれど、日本にはソイルがいるからというくらい、頼みにしているんです。日本には日本の、ぼくの音楽をやってくれるバンドがいる。それがどんなに心強いことか」

 信頼関係を築いて初めて、人と人は心底遊べるし、本気でものを作ることができるのかもしれない。ヘッドフォーンを耳に、目を閉じて歌うホセの気持ちよさげな顔が、すべてを物語っていた。

  • 出演:ホセ・ジェイムズ

    アメリカ、ミネソタ州生まれ。高校まではヒップホップにはまっていたが、ラジオのジャズステーションに感化され、ジャズ・シンガーを志す。NYのニュースクール大学に通う。2006年、ロンドンで行われた国際ジャズコンペティションに参加。名DJ/プロデューサーのジャイルス・ピーターソンに出会い、07年、ブラウンズレーベルと契約。08年に『The Dreamer』でデビュー。1月16日、EMI(ブルーノートレーベル)から『No Beginning No End』が日本で発売に。2月14、15日はビルボードライヴ東京でのライブも予定されている。
    http://emimusic.jp/artist/josejames/
    http://www.josejamesmusic.com

  • 出演:SOIL&"PIMP"SESSIONS

    2001年、東京のクラブイベントで知り合ったメンバーにより結成。ライブ・パフォーマンスを中心とした活動を身上とし、確かな演奏力とクールな雰囲気をただよわせながらも、ラフでエンターテイメントなジャズを展開。2005年、英BBC RADIO1主催の“WORLDWIDE AWARDS 2005”で「John Peel Play More Jazz Award」を受賞。以降、国内外でCDリリース、Live TOURとグローバルに活動中。2006年“Montreux Jazz Festival”、2007年には“Glastonbury Festival”に出演するなど、海外においても確かな足跡を残し続けている。また近年では、国内より椎名林檎、海外よりJamie Cullum、Maia Hirasawaをフィーチャーするなど、ボーカリストを迎えての作品も手掛けている。
    SOIL&"PIMP"SESSIONS HP http://www.soilpimp.com
    Official facebook http://www.facebook.com/soilpimp

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太