今回のアルバムでは、13人のオーケストラ編成のための楽譜を書いている。

「オーケストラが異常に好きなんです。オーケストラのために譜面を書くことが本当に楽しい。ジャズバンドは吹奏楽が一般的ですが、私は管弦楽も入れたいと思いました。それもソロがいてあとは伴奏、というのではなくて、ストリングスカルテットを実現したかった。演奏家たちはかなり難しいことをやってくれているんです。サックス、フルート、ベースクラリネット、フレンチホルンの技術力も助けになりました」

 どんな楽器を選ぶか、と同時に、誰に演奏してもらうかに心をくだく。

「1年半かけてメンバーを探しました。私は楽器というよりも人からイメージする音のほうを大事にしているんです。たとえば泣きのサックスが欲しい、と感じると、その人は日本から連れていこうとか。ゲストの方に直接交渉して、その人のアルバムを聴きまくって、それから書いた曲もあります。私が曲をつくってプロデュースするわけだけど、現場では平等に1人ずつを生かしたいと考えてつくりました。みんなが個性を出せる空間をつくれたことが嬉しかったですね」

 なるほど、この人は作編曲家であり、真のマエストロなんだと思った。街中でタクトを振ってもらったのも、存外、大正解だったのである。

  • 出演:挾間美帆

    1986年生まれ。2009年、国立音楽大学作曲専攻卒業。在学中より作編曲活動を行い、08年、山下洋輔の「ピアノ・コンチェルト第3番『エクスプローラー』」のオーケストレーションを担当、絶賛される。2010年、ニューヨークに留学し、2012年にマンハッタン音楽院大学院を優等で卒業。同年11月「ジャズ作曲家」としてデビューアルバム「Journey to Journey」をリリースした。2013年1月11日、東京オペラシティのニューイヤー・コンサートに登場する。
    http://www.jamrice.co.jp/miho/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影協力:ゼンハイザージャパン株式会社 http://www.sennheiser.co.jp/
撮影:萩庭桂太