大学を休学する。それは彼女にとって大いなる決断だった。

「周囲の人たちといろいろ話し合いもして、自分自身で考えて、決めました。とりあえず半年、休学しようと。学業との掛け持ちは正直、大変なんです。演技の幅を広げる努力にとにかく専念してみようと。数カ月でいきなり歌がうまくなるとは思えないけど、頑張ります!」

 芝居の何が楽しいかと言って、つくっていくという過程や、共に作り上げる人たちの人生観を聴くことも今の彼女には楽しくてならないのだ。

「『幻蝶』のとき、共演した皆さんたちに、芝居への心持ちや、役者としての生き方、みたいなものをうかがって、一線で活躍している人たちの話は本当に面白いと思いました。『20歳のとき、何をしていましたか』といったお話も聞いたのですが、それなりに苦労をされているんですよね。でも誰か見てくれている人がいて、その人たちとのつながりでここまで来れた、というお話も心に響きました。努力はムダじゃないんだと思いました」

 これまでは同世代の人たちとの仕事が多かったが、今回の仕事で、年上の人たちの話を有意義に思ったと言う。

 9月の舞台はまた、同世代の多い若々しい芝居。名古屋の高校で実在する、男子が「宝塚歌劇」をやる部活をモデルにした『ハイスクール歌劇団☆男組』で、対抗する女子校演劇部で男役を演じるボーイッシュな女子を演じる。

「宝塚の男役さんって、みんなお尻がちっちゃいんですよ。今、研究中です。先日、元タカラジェンヌの紫吹淳さんが主演する舞台『源氏物語~ボクは、十二単に恋をする~』を観に行ったんですけど、ものすごくかっこよくて『こんなの見たら男の人に恋できないっ』と思っちゃいました」

 今は彼氏はいない。マネージャーにも「恋愛しなさい」と言われているくらいだとか。

「恋愛も、年上がいいなあ、と思いますね。30歳くらい? いや、若過ぎる(笑)」

 さまざまな経験をしたい年頃なんだと思う。

 21歳くらいって、一回り以上年上の男性が素敵に見えるものだ。たぶん、そのあたりの力量ある男性たちが40歳前後で得る仕事やポジション、その現役感みたいなものに憧れるのである。昨今、60代とか70代のお金持ちが好きっていう女子の気持ちとはまた違う。

 頑張る女の子にとって一番大事なのは、自力、だから。

「いつか帝劇とか日生劇場とか、王道の舞台に立てたら、そんな幸せなことはないですね」

 思いのこもった言葉が、ちょっと震えた。

  • 出演:中別府葵

    1990年熊本県生まれ。血液型A型。172センチの長身で演技にモデルにと活躍する女優。08年にテレビ東京のドラマ24「ウォーキン☆バタフライ」で初主演し、その存在感が話題を集める。その後、テレビや映画に出演、今年3~4月、日比谷・シアタークリエなどで上演された白井晃演出『幻蝶』では、ストリッパー役を好演した。9月には東京・天王洲の銀河劇場『ハイスクール歌劇団☆男組』にも出演する。
    http://horipro.co.jp/talent/PF097/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太