今年3月から4月にかけては内野聖陽が主演した白井晃演出の『幻蝶』という舞台でストリッパーを演じ、話題を集めた。

 主人公たちが探し求める幻蝶をイメージさせるストリッパーの役である。ストリッパーという役作り、かなり技術的なダンスの練習が必要だったのでは、と同性の私も興味津々である。

「ポールダンスを練習しましたね。でもストリッパーなのにエロスがないね、と言われてしまって」

 事務所で情報を集めてもらい、渋谷のストリップ劇場へ実際に見に行くことにした。『道頓堀劇場』。客とステージはかなり近く、夕方でも満員。しかし妙齢の美人マネージャーと女子二人のストリップ・ツアー、かなり不思議な光景だったかも。

「みんながじろじろ見るので、マネージャーがすっごい大きい声で『ああーっ、もう、仕事だから仕方ないわねー』『次の役の勉強だもんねー』とアピールしていておかしかった。私はすごい面白いと思って、前のめりで見ましたよ」

 実際、自分の芝居ではどこまでそれを生かしたのか。

「役ではそこまでは脱がなかったですけどね(笑)。でもなんだろう。そういう仕事に行き着くまでにあった壮絶な過去みたいなものを感じられたので、見に行ってよかったと思います。前へ前へとキャラをつくるような今迄の私の役柄と違って、そういうものを秘めて演じることを学びましたね」

 彼女には、ストリップのような異質で未知な世界に対しても、けっして目を背けない感じがある。それは演じる者としての一つの才能ではないかと思う。

  • 出演:中別府葵

    1990年熊本県生まれ。血液型A型。172センチの長身で演技にモデルにと活躍する女優。08年にテレビ東京のドラマ24「ウォーキン☆バタフライ」で初主演し、その存在感が話題を集める。その後、テレビや映画に出演、今年3~4月、日比谷・シアタークリエなどで上演された白井晃演出『幻蝶』では、ストリッパー役を好演した。9月には東京・天王洲の銀河劇場『ハイスクール歌劇団☆男組』にも出演する。
    http://horipro.co.jp/talent/PF097/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太