自分が向き合って会話を交わしている相手が生まれも育ちも国籍もオーストラリアの女性であるとは思えなかった。ついふだん日本人相手の時と同じスピードで話をしてしまう。そのくらい、今回インタビューするサラ オレインの日本語は流暢だ。それを本人に伝えると、「いえいえいえいえ」と言って、顔の前で手をひらひらと振る。

 そのしぐさもまるで日本人だ。そもそも「いえいえいえ」などと反応する外国人に出会ったのは初めてである。まあ、ちょっとオバサンっぽいけれど、彼女だとそれがすごくかわいらしく感じられて、こちらは意味なくウハウハしてしまう。オヤジは悲しい。

 日本語が上手な理由をたずねると、オーストラリアで生まれた彼女は、母親が日本人のハーフなのだという。しかも、学生時代に1年半、日本に留学もしていたそうだ。

 しかし、たった1年半でそんなにきれいな日本語が話せるのだろうか? 生まれてから半世紀も日本にいる僕よりもはるかにきれいな言葉を選択して話す。

「家族の会話は英語でしたけれど、母がときどき日本の実家と電話で話すのを耳にしていたので、留学して1カ月もするとヒアリングはほとんど問題ないくらいに上達しました」

 そんなサラだから、6月20日(水)にリリースされるデビューアルバム『セレステ』は、英語詞の曲あり、日本語詞の曲あり。さらにイタリア語でも歌っている。スゴイ。

 このアルバムは、デヴィッド・ゲイツ作でアメリカのバンド、ブレッドの代表曲「イフ」、ジョニ・ミッチェルの名曲「青春の光と影」、オフコースの「言葉にできない」など12曲を収録している。アメリカの曲は英語で、日本の曲は日本語で、美しい声で聴かせてくれるのだ。

 彼女の声域は3オクターブもある。

「私は5歳からヴァイオリンをはじめクラシックの教育を受けていますが、リスナーとしてはロックやポップスを楽しんでいました。だから、クラシックやロックをクロスオーヴァーしたアルバムを作りたかったのです。小田和正さんが作詞作曲した『言葉にできない』は、留学時代に好きでよく聴いていました」

【後編】 デビューアルバムにどうしても入れたかった曲

『セレステ』 2012.06.20発売

Blu-ray付限定盤【左】 3,675円(税込) UCCY-9014
通常版【右】 2,854円 (税込) UCCY-1025
http://www.sarahalainn.net/discography.html

  • 出演:サラ オレイン

    1986年オーストラリア生まれのシンガーソングライターでヴァイオリン奏者。子どもの頃からヴァイオリンで国内のコンクールで優勝を重ね、シドニー音楽院に入学。2006年にはシドニー大学に入学し、2008年に東京大学に留学。英語、日本語、イタリア語に堪能なことから、留学時よりコピーライターの仕事に携わる。2010年にシドニー大学を首席で卒業した後、日本での音楽活動をスタート。任天堂Wiiのゲームソフト『ゼノブレイド』やスクウェアエニックスのiPhone向けRPG『ケイオスリングス オメガ』の音楽を担当。6月20日(水)にシンガーソングライター&ヴァイオリン奏者としてのデビューアルバム『セレステ』をリリース(ユニバーサルミュージック)。7月27日(金)に神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ」に出演。11月9日(金)には東京恵比寿ガーデンホールでデビューコンサートが決定。
    翻訳家としても、越野民雄著『オレ・ダレ』(講談社刊)の英語版『Who? Me?』の翻訳を担当した。

    デビューコンサートの詳細 http://www.sarahalainn.net/news/concert/01.html#top01
    オフィシャルサイト http://www.sarahalainn.net/
    公式facebook http://www.facebook.com/sarahalainn.net

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
    幻冬舎文庫 http://www.gentosha.co.jp/book/b4157.html

撮影:萩庭桂太