【前編】はこちら

 そして、世代も超えた選曲も心がけたそうだ。

「家庭で、みんなで聴いていただきたいからです」

 確かに、サラはデヴィッド・ゲイツやジョニ・ミッチェルをリアルタイムで聴いた世代ではない。ならば、このデビューアルバムに自分自身がどうしても入れたかった曲は?

「エンニオ・モリコーネの『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマ曲です。この映画は大好き!  何度も観ています」

 なろほど、素直な女性なのだねえ。

 この映画を嫌いだという人にはなかなか出会わない。この映画を嫌いだという人はたぶん、自分がみんなと同じだと思われたくないか、単純に素直でないか、どちらかだろう。では、サラはこの映画のどのシーンが好き?

「ラストの、キスシーンをつなげた映像です!」

 この回答で、彼女が、本当にまっすぐに、ご両親の愛情がたっぷり注がれて育ったことがよくわかった。『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストシーンは、おそらく100年経っても名場面と称されているに違いない。それほど非の打ちどころなくできている。

 サラのアルバム『セレステ』には、1曲、彼女が作曲した作品もある。英語詞の「ブリーズ・イン・ミー」。声もストリングスも美しい、透明感のある曲だ。こういう美しい曲はどうやって作るのだろう。

「仕上げは楽器を弾きながら行うことが多いですけれど、アイディアやモチーフは、生活の中から生まれてくることがほとんどですね。実は、私の頭の中では常に何となく音楽が鳴っています。こうしてお話しているときも、夜眠っている時も、音が聴こえてくる。それがかたちになってきたら、譜面に起こします」

 はあー、すごい!  サラは生まれながらの音楽家なのだ。

『セレステ』 2012.06.20発売

Blu-ray付限定盤【左】 3,675円(税込) UCCY-9014
通常版【右】 2,854円 (税込) UCCY-1025
http://www.sarahalainn.net/discography.html

  • 出演:サラ オレイン

    1986年オーストラリア生まれのシンガーソングライターでヴァイオリン奏者。子どもの頃からヴァイオリンで国内のコンクールで優勝を重ね、シドニー音楽院に入学。2006年にはシドニー大学に入学し、2008年に東京大学に留学。英語、日本語、イタリア語に堪能なことから、留学時よりコピーライターの仕事に携わる。2010年にシドニー大学を首席で卒業した後、日本での音楽活動をスタート。任天堂Wiiのゲームソフト『ゼノブレイド』やスクウェアエニックスのiPhone向けRPG『ケイオスリングス オメガ』の音楽を担当。6月20日(水)にシンガーソングライター&ヴァイオリン奏者としてのデビューアルバム『セレステ』をリリース(ユニバーサルミュージック)。7月27日(金)に神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ」に出演。11月9日(金)には東京恵比寿ガーデンホールでデビューコンサートが決定。
    翻訳家としても、越野民雄著『オレ・ダレ』(講談社刊)の英語版『Who? Me?』の翻訳を担当した。

    デビューコンサートの詳細 http://www.sarahalainn.net/news/concert/01.html#top01
    オフィシャルサイト http://www.sarahalainn.net/
    公式facebook http://www.facebook.com/sarahalainn.net

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
    幻冬舎文庫 http://www.gentosha.co.jp/book/b4157.html

撮影:萩庭桂太