岡野正道はこの『クラシックジャパンラリー2017in箱根』を実現するため、この半年間に20回以上、箱根に足を運んだという。参加者全員の宿泊や食事のアテンド、競技に必要な空間を確保すること、週末の箱根で渋滞をできるだけ避けて走るルートを決め、50台以上の車が安全に集合できる場所をキープするなど、クリアすべき問題は予想以上に多かった。ひとつのイベントを作り上げるのは、一大事業なのだ。
「なにしろ素人ですからね、やってみたら大変でした(笑)。今回が初めてなので、なにかひとつ許可を取るにも、一から説明しなければならない。次になにをすべきかわからないので効率が悪いし、お約束みたいなものも知らないですし。しかも暴走族のイメージがあるのか、車関係のイベントというと、それだけで〝あー、無理、無理！〟って言われてしまうんです。何をするにも規制重視、前例のないことには、なかなか許可が下りないんですね、この国は」
　でもその壁を壊してくれたのは、意外なことに女性たちだったとか。
「女性はクラシックカーが好きですね。もちろんガソリン臭いとか、乗ったら日焼けするとか嫌われる要素はいくつかあるけれど、でもクラシックカーの見た目とか雰囲気で気に入ってもらえるみたいです。箱根ロータリークラブの会長とか温泉旅館の女将の会とか、女性たちが気に入ってくれたおかげで話が進むことがいく度もありました。地域の人たちの理解がないと実現しない企画なので、助かりました」
　話を進めていく中で、素人だからこそ実現した企画もあった。
「渋滞を避けるため、日曜日は朝７時にホテルを出発することにしたんです。レストランは開いていないので、朝ご飯にサンドイッチを用意したんですが、それでは不満に思う人もいるかもしれない。
その話を聞いた真鶴町の町長そして職員の方が新鮮な干物とご飯とみそ汁を提供していただけることになりました。
当日は最高の景色を見ながら、休憩所のおばちゃんたちが温かいご飯と味噌汁を用意し、町長の好意でサザエまでつけてくれて、それはおいしかった。少し変わったスタイルの朝食でしたが皆さんが満面の笑みを浮かべて〝うまかった！〟と言ってくれたときには、僕も本当にうれしかったです(笑)」