岡野が新しいラリーを作ろうと思ったきっかけは、もうひとつある。子どもたちにクラシックカーの魅力を知ってほしいのだ。
「僕は車やボート、海が大好きなんです。そもそもは小学生の頃、スーパーカーブームというのがあって、夢中になりました。そして晴海にあった国際展示場に行って、ポルシェターボやロータスヨーロッパの実物を目にしたとき、大感激したんです。こんな車に触ってみたい、乗ってみたい、とね。船もそうで、当時太平洋を41日間かけて一人でサンフランシスコから沖縄まで横断するレースがあって、やはり晴海でそのときのヨットを見る機会がありました。船の中に狭いキャビンがあって、そこで生活しながら海を渡るという冒険に刺激を受けました。
 僕自身がそうだったから、やはり子ども時代のリアルな経験は、将来の夢に直結していると思うんです。でも今、ものを作っている現場なんて、実際に目にする機会がないですよね。家を建てる現場だってカバーされてしまっているから、大工さんや塗装の人がどうやって作業しているのか、目撃するチャンスがない。車も、塗装とか板金とか、それを作る職人さんの仕事がどういうものなのか、知らずにいる人がほとんどでしょう?」
 クラシックカーのラリーでは、沿道の子どもたちが大興奮。見たことのないかっこいい車に、みんな大歓声をあげるという。そうやって、まずクラシックカーというものを知ってほしい。乗りたい、持ちたいと思ってほしい。そういう車を作るには、維持するにはどんな技術が必要なのかを、子どもたちに知ってほしい。
「100万人のなかのひとりでもいいんです。そういう人が育ってくれればいいな、と思いますね」
 実はクラシックカーの世界は今、危機に瀕している。
「アジアの中でクラシックカーを車として維持できているのは、日本だけです。中国やタイにも所有している人はいますが、投資目的だったり、展示するだけ。メンテナンスできる人がいないからです。ドイツには専門の職人を養成するシステムがあるらしいですけどね。日本にも板金や塗装のスペシャリストが何人かいらして、一生懸命、大切に維持してきた。でもその数はどんどん減ってきています。今僕たちがその技術を残すための努力をしないと、僕たちの持っている車が10年後には維持できない、走れない車になってしまう。ただの場所を取る飾り物になってしまう前に、できることから始めようと思うんです」

  • 出演 : 岡野正道 おかの まさみち

    1963年生まれ。株式会社インプレッション代表取締役。 
    HP http://www.impression.co.jp/

    Classic Japan Rally 2017 in HAKONE  https://classicjapan.jp/

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/