それにしても。ＩＴ企業の社長である岡野正道が、クラシックカーラリーを主催するこの情熱は、どこから来ているのだろう？　
「人に喜んでもらうのが好き、というのがひとつ。サプライズじゃないけどいろいろアイデアを出して、笑顔になってもらうのが好きですね。僕はイベント主催に関してはアマチュアなのでアマチュアならではの、従来とはちょっと違う視点から新しいものを作りたかった。
　もうひとつは、かっこいい大人になりたいってことです。今、かっこいい大人ってなかなかいないでしょう？　僕はコンプレックスがいっぱいあって、あと身長が15センチ高かったら違う人生だったと思うし、この鼻があと5ミリ高かったら、あと髪の毛がもう少しあったら････(笑)。20代の頃からヨットやスキーに打ち込んだのも、コンプレックスがあったからこそ、です。女の子にもてたくて、ね(笑)。
でもこの年になると、身長とか見た目はともかく、かっこよくなれる方法はある、と思うようになりました。年とともに枯れていったり諦めたりするのは簡単だけど、今だからこそできることを、それが自己満足に過ぎなくてもね、ちゃんとやっていけば、それがかっこいい大人というものではないかと」
クラシックカーラリーの醍醐味を、仲間たちと分かち合うこと。クラシックカーラリーの楽しさを次世代につなげること。クラシックカーの魅力を子どもたちに伝え、未来を作ること。そのために汗をかいて今、岡野正道はたしかに、かっこいい。50代のたたずまいには、その人が今をどう生きているかが、くっきりと刻まれるのだ。
「たとえば自分のクラシックカーのボンネットにこう、腰をかけますよね。若い頃は、かっこつけていると思われるんじゃないかと、急に我に返ったりしていた。でもこの歳になってくると、ふつうに腰掛けている。心の中で、今、俺ってけっこうかっこいいかもしれないな、と。足は地面に届いてないけど、ま、いいかな、と思うんですよ(笑)」