今年3月25日、小峰公子は東京・キネマ倶楽部のステージに立っていた。
『ZABADAK 31st』と銘打ったこの公演、実はかなり特別なもの。約1年前、この場所で開催された『ZABADAK30周年記念演奏會』で、ZABADAKを率いる吉良知彦が体調不良を訴えた。その後一時期持ち直したものの、7月3日、急逝したのだ。ファンにとって、そして長年吉良のパートナーであった小峰にとっても、この場所に戻ってくるには覚悟が必要だった。
 冒頭で一瞬声をつまらせたものの、小峰は堂々と挨拶をして、見事にステージに立ち続けた。今までファンに愛されてきた数々の名曲を歌い、駆けつけた仲間のミュージシャンたちと盛り上がり、会場全体を巻き込んだ。何度も〝このステージに吉良くんがいるような気がする〟と言いながら、涙は見せなかった。
「泣いたらダメだと思って、あの日は絶対泣かないようにしようと思っていたんです。あのコンサートは吉良くんがいるときから決まっていたものだから、あれまではちゃんとやらなくちゃと心に決めていました」
 さらにその30周年コンサートを収めたDVD『ZABADAK30周年記念演奏會@東京キネマ倶楽部』も、この春発売にこぎ着けた。
周年コンサートとDVD、ふたつの大仕事を無事にやり遂げ、しばらくしてから小峰は家の中で転び、肋骨を3本折って入院したという。
「みんな口を揃えて、『これまで頑張りすぎたから強制的に休めってことだよ』って言うんです。でも自分では全然、頑張ったつもりはなくて。去年の夏、吉良くんがいなくなってからもスケジュールは決まっていたので、ずっと、残ったメンバーでコンサートをやっていたけれど、吉良くんの作った音楽を演奏しつづけることで、少しでも悲しい気持ちを昇華できる。ただただ、そういう想いでした」
 でもね、と、小峰は言う。
「夏が来るのが、ちょっと怖いですね。これからの季節、ちょっとつらいなって」

  • 出演 : 小峰公子  こみね こうこ

    福島県生まれ。高校時代にバンド活動を開始。大学進学後、東京でさまざまな大学の音楽サークルに参加。1987年よりZABADAKに歌詞を提供、コーラスなどで活動に参加するようになる。1991年、保刈久明と結成したKARAKがメジャーデビュー(後に活動休止)。2000年以降、ZABADAKの事務所を立ち上げ、活動をサポート。その一方で多くの楽曲の歌詞を提供、ボーカルとして重要な役割を果たし、2011年3月正式メンバーとして加入。ZABADAKの吉良知彦とは27才で結婚、1児をもうけている。
    ZABADAKのHP http://www.zabadak.net/

    ヘアメイク 双木昭夫https://ameblo.jp/kurarasystem/

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/