1月21日土曜日、ニコレッタは六本木クラップスのステージで大きな花をいけていた。その夜開かれる音和座『辻本好美 新春コンサート』にコンサートの一員として参加しているのだ。(#1 写真)
 音和座のコンセプトは〝伝統ある和楽器の演奏を通して、日本人にも外国人にも日本の文化を体験してもらう〟というもの(https://www.facebook.com/otowaza/about/)。尺八や箏など邦楽の楽器が、パーカッションやピアノなど洋楽の楽器と渾然一体となって、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。和と洋の見事なコラボレーションを楽しむことができる場だ。ニコレッタの生け花はそんな音和座の象徴として、欠かせないものになっている。

「花をいけるとき、私はいつも音楽を聴きながら花と向き合います。その瞬間は大きなバブルに包まれているようで、バブルの中には私と花しか存在しない。至福のときです。音和座の花をいけるときは、出演者がリハーサルをしているので、耳から入ってくるのは和洋折衷の素敵な音楽。いつもより花の流れがダイナミックになりますし、演奏者の音の美しさが花に流れ込んでくるような気がします」

 気負うことなくマイペースに、自分の花をいけつづけるニコレッタ。生け花を始めてまだ10年も経たないうちに、生け花アーティストとして意欲的に活動している彼女の姿に、励まされる女性も多いはずだ。

「〝It‘s never too late!〟。やりたいことは、今すぐやり始めるべきです。子育て中のお母さんたちも、自分の好きなこと、趣味の時間はもったほうがいいと思いますね。もちろん子育ては大変ですけど、やりたいと思ったときがやるべきタイミング。子育てと趣味と両立していると、両方楽しめるようになるんです」

 子どもを育てるのと同時に、自分も育てることができたら、その先の人生、きっと楽しくなる。その夜、六本木クラップスのステージ上で、ニコレッタの花は早春の香り高く、咲き誇っていた。

  • 出演:ニコレッタ・オプリシャン Nicoleta Oprisan

     ルーマニア・ブカレスト大学にて言語学の学士号を取得し、イギリス・レスター大学にてマスコミュニケーション学の修士号を取得。さらに日本の学習院大学で日本語を学んだ。11年前から家族とともに日本に在住。数年前から草月流いけばなを学び、師範となる。2年前、株式会社5Sensesを設立。生け花だけでなく、人々の五感を刺激するアイテムを次々と生みだしている。
    オフィシャルサイト http://5senses.co/ja/welcome.html

    Facebook https://www.facebook.com/5-Senses-811766138931083/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/