ニコレッタが作った会社の名前は『5Senses』。人の五感に訴えかけるクリエイトを志してつけた名前だ。クリエイションは生け花からさらに、さまざまなアイテムに広がろうとしている。
 たとえば、スカーフ。今週 #2 火曜日のニコレッタがまとっているのは、そのひとつだ。

「大きなステージを飾る花を作ったときに、関係者のみなさんがすごく褒めて下さった。でも終わったら解体しなければいけませんよね。花は一期一会です。でも写真に撮っておいたので、ある日それをグラフィック化したデザインを作って見たんです。それをそのまま、スカーフにしてみました」

 上質のウールに花を使ったデザインがあしらわれて、上品な仕上がり。半分に折って使いやすいように、柄は裏表にあしらわれている。
 もうひとつのアイテムは、香水だ。

「香水はもともと大好きなんです。香りをこれ、と決めないで、毎日違う香水をつけます。その日の気分とか着るもの、会う人や行く場所に応じて変えるのが楽しくて。自分でも香りを作りたいと思って勉強中なのですが、先日、香りのコンテスト(アトリエ・アローム・アンド・パルファム・パリ主催、パルファム・グランプリ大会)があったので応募してみたところ、最優秀賞を受賞しました」

 爽やかなシトラスの香りで始まり、次第にぬくもりのある繊細なジャスミンとキンモクセイのブーケに変わり、最後はシナモンとバニラの優雅な残り香に変わる。ニコレッタの作った香水『エクリプス(日食)』は大人の女性に相応しい、品格のある香りだ。

「香水を作るのは、花をいけるのとどこか似ています。いろいろな素材を組み合わせて、それぞれの良さを活かしながら、ひとつに集約させていくんです」

 スカーフに香水と、クリエイトの範囲は広がっていく。

「この先、ネットで取り扱うことになりますが、でも大きなプロダクションにするつもりはありません。ここにしかないものを、ほんの少し作っていきたい。マスプロダクションにすると、オリジナリティがなくなると思うんです。皆が持っているものとは違う、私だけのものとして、愛されるプロダクツであってほしいですね」

  • 出演:ニコレッタ・オプリシャン Nicoleta Oprisan

     ルーマニア・ブカレスト大学にて言語学の学士号を取得し、イギリス・レスター大学にてマスコミュニケーション学の修士号を取得。さらに日本の学習院大学で日本語を学んだ。11年前から家族とともに日本に在住。数年前から草月流いけばなを学び、師範となる。2年前、株式会社5Sensesを設立。生け花だけでなく、人々の五感を刺激するアイテムを次々と生みだしている。
    オフィシャルサイト http://5senses.co/ja/welcome.html

    Facebook https://www.facebook.com/5-Senses-811766138931083/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/