今週のYEOのヒロインは、ニコレッタ・オプリシャン。日本在住の生け花アーティストだ。ふとしたきっかけで草月流の生け花を学び始め、数年後には師範まで取得。アーティストとして活動するために起業し、イベント会場を花で盛り上げたり、ホテルのダイニングを飾ったり、時にはコンサートのステージを彩ったり。さらには研ぎ澄まされた美意識をもとに、テキスタイルや香りの分野にも手を伸ばしている。
 アーティストというと、ちょっとクセのあるキャラクターを想像しがちだけれど、彼女はいたってノーマル。おだやかで品が良くて知的なマダムだ。
 いったいどんな花をいけるのか、オフィシャルサイト(下記参照)を覗いてみたら、まさに百花繚乱。いろいろな花材を、さまざまな花器にいけ、大きな空間から茶室の片隅まで、その空間を彩っている。今さらだけど、生け花って奥が深い。

「私は草月流なんですけど、もともとヨーロッパの人なので、多分無意識のうちに、そっちのほうの影響があると思います」

 ヨーロッパで花を飾ると言えば、フラワーアレンジメント。生け花とはコンセプトからして、異なるものらしい。

「フラワーアレンジメントは、たとえばブーケのような作品を作るとき、規則的なパターンをベースに作ります。大事なのは色のバランスで、ルールを覚えれば誰でも同じものを何個でも作れます。でも日本のいけばなは、全然違う。基本的ないけ方はありますが、作品はそれぞれ個性的なものになります。同じ花材と同じ花器を使っても、同じ作品は絶対に生まれないんです」

 ではニコレッタの作品は?

「大きな会場を飾ったときよくお客さんに言われるのが、『子どもの頃を思い出す』という言葉です。『幼い頃の初雪のシーンが蘇った』とおっしゃる方もいました。もちろん思い出は人それぞれですけれど、何か記憶の回路に触れるものがあるのかもしれません。それと同じように、いつか何かのときに私の作品を思い出してもらえたら、嬉しいですね(笑)」

 外国人の彼女がいったいどういう経緯で生け花アーティストになったのか?
 何を目指しているのか? 

 勇気と元気が出てくるそんなお話は、明日からのYEOで金曜日まで連日更新します!

  • 出演:ニコレッタ・オプリシャン Nicoleta Oprisan

     ルーマニア・ブカレスト大学にて言語学の学士号を取得し、イギリス・レスター大学にてマスコミュニケーション学の修士号を取得。さらに日本の学習院大学で日本語を学んだ。11年前から家族とともに日本に在住。数年前から草月流いけばなを学び、師範となる。2年前、株式会社5Sensesを設立。生け花だけでなく、人々の五感を刺激するアイテムを次々と生みだしている。
    オフィシャルサイト http://5senses.co/ja/welcome.html

    Facebook https://www.facebook.com/5-Senses-811766138931083/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/