Jsuは20数年前から、スピリチュアルな活動に参加している。と書くと、超能力とか霊能者とかアブナイ系にハマっているみたいだけど、そうではない。
 よりよく生きるとはどういうことか、幸せとは何か、何のために自分はあるのか。
 言わば哲学的な命題と、真っ正面から取り組むようになったのだ。

「俳優として他人を演じるのは、かなりハードなことなんだ。自分が何者かを把握していないと、出来ないことだから。多くの俳優がキャリアの途中で『自分は何者なんだ?』という壁にぶち当たる。演技が上達して上手に演じれば演じるほど、本当の自分がわからなくなってくるからね。どうしても本当の自分を、自分というものの正体を知りたくなるんだ。中には役柄の影に隠れて自分を忘れようとする人もいるけれど、勇敢な人は自分と対峙しようとする」

 Jsuもその大きな疑問に囚われ、そして迷った。そこで彼が出逢ったのが、ジョン・ロジャーという思想家だ。

「以来ずっと、ジョン・ロジャーと共に生きてきた。彼は瞑想することを教えてくれたし、さまざまな生きる上の知恵を授けてくれたよ。
 例えばお祈りをするとき、最後に必ず〝For the highest good〟という言葉を付けるように言われた。僕自身の欲求はあるとしても、すべてはみんなにとって良いことでありますように、とね。
〝多くを望みすぎるな〟とも言っていた。望めば実現するかもしれないけれど、それが何をもたらすかは神様にしかわからないからだ。家が欲しいとしても、大きな家だと維持費がかかりすぎる。不幸を避けてしまったら、その不幸によって得られたはずの知恵とは巡り会えなくなる」

 2年前、師と仰いでいたジョン・ロジャーが亡くなり、Jsuは悲嘆にくれた。ようやく少し元気になって、以前ロジャー氏と一緒に訪れた日本に、再びやってきたのだ。

  • 出演:ジェズ ガルシア(Jsu Garcia)

    1963年10月6日生まれ。アメリカ、ニューヨーク出身。19歳から俳優として映画、ドラマで活躍。主な出演作に『エルム街の悪夢』『トラフィック』『ザ・ロスト・シティ』など。
    オフィシャルサイト http://www.imdb.com/name/nm0006987/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/