実は、萩本舞の記事の、本題はこれから。連載最終日の今日は、彼女の抱えている病気
について、書いていく。大学を卒業する前に体調が悪くなったことは、火曜日の記事で触
れた。その後20代半ばになって、体調がさらに悪化した。
「お医者さん曰く、精神力でカバーしていたらしく、それまでふつうに過ごしていたんで
す。でも自分的には、外に出るだけで太陽がまぶしいし、髪を結んだだけで痛いし、携帯
を見るだけでツラい。ひどいときは1日20時間くらい、寝ていました。意識が無いみたい
な感じで。無理して出かけて友だちに会っても、なんか性格キツくなった? そわそわし
てるよ、って言われました。自分ではそういう変化を、老化が始まったのかなくらいに考
えていたんですけど」
 周囲に勧められて、思い切って人間ドックへ。
「そこで、人間ドックの最中に倒れてしまって、救急搬送されたんです。検査のために朝
ご飯を抜きますよね、そのせいで低血糖になっていました。一食抜いたくらいで低血糖に
なるような体に、人間はできていない、って言われて、そこから検査です。大学病院に行
って、たぶんこの病気だと思うけど、すごいレアな症例だから、検査入院してくださいっ
て。そこから2年、経過観察して、やっと出た病名が、続発性副腎皮質機能低下症でした」

 かなりすっとばして簡単に言うと、萩本舞の場合は、副腎から出るコルチゾールという
ホルモンがあまり出ていないために、体の各所にトラブルが発生する、らしい。難病のひ
とつだ。
「でも私は軽症らしく、今、お薬と上手にやれているので、全然いいかな、みたいな」
 この病気を公表することを、当初はためらった。
「レポーターとかモデルとか司会のお仕事とか、体力が必要ですから、公表したら夢が遠
ざかってしまうのかもしれないって。でも自分が病気になったとき、ネットで調べても実
態がよくわからなかった。体験者のブログだけが頼りだったんです。だからそれを私が書
くことによって、この病気になってもつきあい方さえわかればフツウの生活の中で頑張れ
るよって、伝えたかった」
 だけど、思いはそのまま伝わるとは限らない。
「自分のSNSでいろいろ書いていたら、同じ病気の方の中には、〝自分は動けないのに
、動ける人がいると自分の努力が足りないみたいに感じてしまう〟方もいることに気がつ
いたんです」
 人によって症状が違えば、薬の効き方も違う。病気だけど元気です!という発信に、傷
つく人もいるのだ。
「そこで決めました。私は背中で見せて行こうって。自分からアピールすることはしない
けれど、自分の病名は明かしたまま、私は私で今まで通り、やりたいことに挑戦する姿を
見せていこうって。そこに光を見出す人もいるといいなって」
 病気を抱えながら生活する中で、気が付いたことがある。
「意外とみんな、病気持ちだぞっていうことです。持病を持っていて、それでもその病気
と付き合いながら生きている人、たくさんいます。でもそれを隠さなければいけない世の
中って、ちょっと変です。病気って、個性のひとつだと思うんです。ステロイドとかイン
シュリンとか成長ホルモンとか、薬は近眼の人の眼鏡みたいなもの。それがなきゃ生きて
いくのが大変だけど、それさえあれば自分なりに生きられる。病気はその人の個性なのだ
から、みんなそれぞれ、そのことを理解して、助け合って、一緒に頑張って行こうね、み
たいな。そういう社会にこれからなっていけばいい。それもひとつのバリアフリー、です
よね!」
 だから、萩本舞はあきらめない。持病と付き合いながら、コロナ禍の中を泳ぎながら、
レポーターの夢に向かって、歩いて行く。
「レポーターになったときに、教育の現場を知っていること、病気を抱えていること、モ
デル経験も弓道も、どれも全部無駄にはならないと思います。だから私に、あきらめるっ
ていう選択肢は、ないんです」

  • 出演 :萩本舞  はぎもと まい

    11月24日生まれ。千葉県出身。大学在学中に、ミス横浜市立大学(ミス
    YCU)グランプリ受賞。モデル、ラジオパーソナリティ、非常勤講師。さまざまなスキ
    ルを生かして複数の職業に就いている。続発性副腎皮質機能低下症であることを公表して
    いる。

    トライアングル所属/https://try-angle-2.com/Hagimoto_Mai.html

    ツィッター/ https://twitter.com/satsumaimo63

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/