西原亜希自身、どんな子どもだったか、というと。
「しっかりした子だと、自分で思っていました。末っ子で、自分は家族の中で一番偉いって、ものすごい勘違いして生きてきた子どもでした(笑)。まわりからも〝しっかりしている、大人びている〟と言われたし、だから〝私は強い〟と思い込んでいた。そのせいで、弱い自分を自分で認めることができなかったんです」
 しっかり者で、周囲の期待に応えながら学校に行き、そして女優になり、母となり。
「なのに、自分が理想としていた母親像に自分がなれていない、という葛藤が、すごく苦しかった。なにかが邪魔をしている、モヤモヤしていました」
 チャイルドセラピーの講座を受けて、自分の幼少期のこと、体験したこと、感じたことを思い返してみたら・・・・。
「私、こんなにさびしかったんだな、とか、頑張っていたんだな、とか。そういう自分を見つけられて、それをたくさんくり返すうちに、自分をやっと見つけられたような気がしました。実はすごく甘えん坊な、頼りない人間だったんです(笑)。でも、それを隠すためにヨロイを付けて生きてきた。でもそれって、何のための虚勢だったんだろう? ヨロイを付けてないと私じゃない、そう決めていたのは自分だったんだ、ということに気付きました。気付いたら、ヨロイを脱げたんです。すると、こんなに軽いんだ、って(笑)、すごく生きやすくなりました」
 自分が変わると、まわりも変わる。
「少しずつ、娘との関係性が変わったし、自分を育ててくれた私の母への思いも変わってきました。自分の弱さとか未熟さとかダメなところを自分で受け入れると、人のダメなところ、弱いところにも、寛容になれるんですね。子どもって、何かやるときにフニャフニャして、出来ないフリをすることがあるんです。今までだったらイライラして、『出来ないフリしないで!』って、つい、ビシッと言いたくなることもあったんですけど。でも今は、『そういう時もあるよねー』って(笑)。1度は受け入れて、寄り添ってあげる。『でもね、こうしないと、ダメはダメなんだよ』って、言い聞かせる。子どもの感情を変えていくには、ステップが必要なんです」
 具体的に、子育ての現場で、チャイルドセラピーは強力な助けになるらしい。
「どういう言葉のかけ方をすればいいのか、わかるようになりました。
 たとえば転んで小さなケガをしたとき、お母さんたちはたいてい、『痛くない痛くない』って言います。『たいしたことない、大丈夫、痛いの飛んでけ-!』って。すると子どもは『ぎゃーっ!』って、ずっと泣いている。するとお母さんもイライラして、『いつまで泣いているの!』って、すると子どもは怒られてさらに泣き続ける。そしてそれが何度もくり返されると、子どもは『痛い』って言っちゃいけないんだって刷り込まれてしまいます。何か心がズキンと痛いことがあっても、これは言っちゃいけないんだ、こう思っちゃいけないんだっていう考え方に染まっていきます。
 逆なんです。そのとき『あー痛いね、痛いね、痛かったね』って言うと、早く泣き止むんですよ。これ、百発百中です。自分は痛い、それをわかってもらえた、という安心感で、泣き止むんです。それ以上アピールする必要はなくなるし、寄り添ってもらえたことで満足できるんです」
 それはきっと、子どもの話だけではない。大人だって、『痛い』と言って、ただ頭ごなしに否定されたら、哀しい、さびしい、むっとする。寄り添って、同調して、共感してもらえると、それだけで安心するのは、子どもも大人も同じこと。だよね?