27歳で出産してから、西原亜希は初めて子育てに挑戦。それは想像以上にハードな日々だったという。
「子育てが大変って、それはすべてのお母さんがそうなのかもしれませんけど。泣いている子どもを泣き止ますことができないのは私が悪いんじゃないか。私が良いお母さんじゃないから泣くのかな、とか、原因は全部自分にあるんじゃないかって。どんどん自分の気持ちがコントロールできなくなって、心が苦しくなってきて。夜泣きもする子だったので、寝られない状況が続いて、その中で夫婦関係もうまくいかなくなったり。
 子どもは本当に可愛いんです。だからもっと子どもと仲良くなりたい。なのにイライラしてしまうこの自分の気持ちはなんなんだろう? 私って母性がないのかな? 愛情が足りないのかな? って。このままだと娘と親子の関係性が、うまく築けないんじゃないかって。こんなお母さんでゴメンネって、思うようになっていました」
 そんなとき、話を聞いてくれた友人のひとりが、チャイルドセラピーというものを教えてくれた。
「すぐに検索しました。で、私が知りたいことがここにあるような気がしたんです。コンタクトを取って、受講することにしました」
 チャイルドセラピーなるもの、子どもに何かしてあげるものかと思ったら、そうではなく。すべての人の、その中に潜んでいる〈子ども〉に、働きかけるものだった。
「大人が過去の自分、子どもの頃の自分の気持ちに、まず向き合う。そこから始まるんです。幼少期、少なからずみんな、さびしかったり、怖かったり哀しかったりした経験がありますよね。引っ越しとか転校とか身内の死を経験して、喪失感に囚われたり。そういういろいろな記憶は、傷として残っている場合があるんです。その傷にフォーカスしてあげると、そういう気持ちを大人になってから見つけてあげると、ふわーっと癒されるんです。ああ、自分は子どもの頃、そんなふうに感じていたんだ。あの時気付かないうちに傷ついて、その記憶はまだ残っていたんだって」
 その自分自身の気付きが、子育てにどうつながるのか、というと。
「自分の子どもが、そのボタンを押しているんです。他人は自分の鏡って良く言いますけど、今目の前にいる子どもが、自分の子どもの頃の記憶とつながっているんです。子どもがわがままだったりダラダラしていると、親はイライラしますよね。それは自分自身の中にも、そのわがままやダラダラの種があるから、だから余計に腹が立つんです」
 子育ては、子どもの頃の自分自身と、向き合うことでもあるのだ。そしてここからが、目からウロコの大発見だった。