2011年から『若村麻由美の劇世界』という公演を、自主的に続けている。
「最初は、私が自分の興味のあることを発信する、コメディだろうが悲劇だろうが、自分でやりたいことをやる機会を作ろうと思って始めました。自分が役者なんだよってことを、自分自身に示すためにやる会です。役者である証を自分に立てる、みたいな。お客様には、それを目撃者として見に来ていただく。私は本当に役者なのか、今この時期の自分に何ができるのか、それを問う作品を選んでいます」
 俳優として与えられる仕事だけでなく、自分で企画し、舞台を作って行く。40代半ばにして彼女は、自分専用の『虎の穴』を作り、自分を鍛えることにしたのだ。
「ふだん、いただくお仕事というのは、私の可能性を客観的に見てくださった方が、力を引きだしてくださるものだと思います。私はそんなに主体性がある方ではないし、これがやりたい、あれがやりたい、と思うことはあまりないので、本当にありがたいです。でも、いざ自分から発信するとなったら、自分自身に負荷をかけないと。ハードルを高くして、毎回冒険することにしています」
 最初に選んだのは、『原典・平家物語』。平家物語は延々と続く物語なので、いくつかのパートに分け形も変えて、能楽堂などの場所を借りて、幾度も上演してきた。次にやったのは『ワルツ~カミーユ・クローデルに捧ぐ~』。美術館の空間を借り、ロダンの彫刻の前で語り、演じ、歌う機会を持った。
 そして今年12月、挑むのは近松門左衛門の『曽根崎心中』。
「私、近松門左衛門は日本のシェイクスピアだと思っているんです。その彼の代表作ですし、これ、実際に起きた心中事件を元に、事件から1ヶ月後には舞台にかかっていたと言われていて。つまり今のワイドショーみたいに、実際はどういうことだったのかを詳らかにしながら、物語として昇華させているんですね。これが大ヒットしたので、そういう実録モノの試みはこの後も続くんですけど、この作品がいわば第一弾だったわけで。だから作品に勢いがあるんです」
 文楽や歌舞伎でこの演目は幾度も上演されているけれど、さらに今回は新機軸。『曽根崎心中 ノーカット版』なのだ。今までの公演では省略されることの多かった冒頭部分、『観音巡り(大阪三十三所巡礼)』の部分から、物語を始めるという。
「いつもは、クローズアップされるのは主人公ふたりの心中の成り行きですけど、でも、近松門左衛門は最初に巡礼シーンをつけることによって、ふたりへの鎮魂の思いを込めたのだと思います。心中はしたけれど、その恋が実ってふたりが成仏しますように、と。そうじゃないと、本当に起こった生々しい事件ですから、書けなかったと思うんですよね。ってこれは、私の勝手な思い込みかもしれませんけど(笑)」
 今回は公演以外にも、大阪市内に残る三十三所が今、どうなっているか、心中したふたりを祀っている露天神社(つゆのてんじんじゃ)にも足を運び、動画を撮って、配信する予定だという。
「今は純愛のふたりを結びつける縁結びの神様として、人気スポットになっているらしいんです。なんといっても、曽根崎心中の締めの言葉は、『恋の手本となりにけり』ですから。女子がいっぱい参拝して、絵馬もいっぱい奉納されていて、けっこう派手な境内になっているみたい(笑)。動画と舞台と、両方見ていただけると、さらに楽しめるかなって」

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スタイリスト 岡のぞみ

衣裳 HIROKO KOSHINO


ヘアメイク 小泉千帆(éclat)

【éclat)】http://eclat-daikanyama.com/