『エール』で演じている夏目千鶴子役は、オーディションではなく、直接オファーがあったという。圧倒的な歌唱力が求められる役柄だし、清楚で凜としたたたずまいは、まさに千鶴子そのもの。
「私自身と共通点がたくさんあるんです。千鶴子は小さい頃からわき目もふらずクラシック音楽に打ち込んできたし、性格がちょっと、不器用なマジメさというか、そこも似ています。私は千鶴子ほどストレートに自分の想いを人にぶつけることはできませんけど。学生時代の友だちには、〝あの役、満佑子のまんまやん〟って言われます(笑)」
 子供時代の話を聞いていたら、こんなエピソードが飛び出した。
「中学は公立に入ったんですけど、生徒全員、何かの部活に入らなくちゃならない。でも私は踊りや歌のお稽古事があったので、部活には入らなかったんです。するとやっぱり浮いちゃうし、いじめられるんです。気が付くと靴が捨ててあるとかカバンが捨ててあるとか、日常茶飯事でした」
 それはツラかったね。
「そこで考えたのが、勉強の成績良かったら、誰も何も文句言えないんじゃないかって。そこからむっちゃ勉強したんです。数学が苦手で、1学期の試験では19点しか取れなかったのに、〝むっちゃ勉強したろ〟って頑張ったら、2学期は91点。そうやって勉強してたら、誰も何も文句言わない、いじめられなくなりました」
 つ、よ!
「一匹オオカミでいることが、ちょっと怖い時期じゃないですか、中学生くらいって。特に女子は、どっかに属してないといけないみたいな。でも勉強できる子って、意外とそういうグループとは関係なく過ごしているというのがわかって、休み時間とかずっと勉強してたりしたら、全然快適だし、さみしくもないし」
 しかも、その上。
「こういうことも芸の肥やしになるなって。人生経験のひとつ、ですよね。何かを演じる上で、ツラい思いとか、ナニクソって頑張ることとか、悔しさとか、そういう引き出しは絶対に必要だから、今のうちにそれを経験させてもらって、人間関係のいろいろを見せてもらって、ありがとう、って(笑)」