もうひとつ、長内映里香が変わった理由は、インタビューも後半になったあたりの会話から飛び出した。
「私、この夏、10日間付き合った彼氏にフラれたんです!」
 えー! なかなかの、ぶっちゃけ発言。でも、よくよく聞いてみると。
「以前の知り合いで、その人とは数年間疎遠になっていたのが再会して、そこからいきなり始まったところだったんですけど」
 交際が始まったのは、彼女が久しぶりの舞台に挑戦していた最中。肉体的にかなりハードな舞台で、身体は疲労困憊。体力に自信を失い、メンタルもかなり落ち込んでいるところだった。
「体力も気分も落ちてしまったら急に、今まで目を背けてきたことが、気になり始めたんです。周りを見渡したら、かつての同級生たちはみんな結婚したり出産したり。私もやっぱり子どもが欲しい。そんなこと考え始めたら、自信を持ってやってきたはずの芝居まで、この先ずっとやっていけるのかなって不安になってきて」
 そこにタイミング良く、男子登場。その彼を見るうちに、思いだけが先走り。
「この人だったら結婚して子どもが産める、かもしれないって、そこまで考えていたんです。ところが付き合い始めて10日ぶりに会ったあと、LINEが来て、〝今日で無理だとわかりました〟って。すごい長文で、私のことを徹底的に否定する文章が延々と続いていたんです!」
 大ショックで、何も手につかない放心状態がしばらく続いた。でも、このままじゃいられない。久しぶりに演技レッスンに行ってみたら、驚くことに。
「演技コーチが〝映里香、どうした? 芝居が全然変わった、良くなってるよ!〟って言うんです。力が抜けて、自然にそこにいられる芝居ができるようになったみたいで(笑)。これは面白いぞ、これを芝居に生かさない手はない、と思いました。しかもなんだか妙に気分が落ち着いて、冷静になれて、楽観的でもあるんです。失恋後にたまたま約束していて合った人たちに救われましたし、今私の周りにいる人たちのありがたみを心底痛感しました」
 女性にとって、30歳というのはちょっとしたボーダーライン。意識してないつもりでも、結婚とか出産とか子育てとか、仕事とか将来とか、いろんなことが押し寄せてくる。長内映里香もちょうど、そんなタイミングだったのだろう。
 でも立ち直ったら、女は強い。
「それまで頭の中に〝子ども産みたいのに、できない私〟って思いがずーっとあったのに、なんか今は〝そのうち、なんとかなるかな〟って思えるようになりました。なんか物事って、自分で引き寄せているんですね。ネガティブな思いに囚われていると、それにつけ込むものが近づいてくるんです、きっと。前向きな気持ちに切り替わったら、知り合う人も前向きな人たちばかりで、今は毎日、明るい気分です!」