ところがそんなグラビア人気が、彼女の足を引っ張ることになる。連続ドラマにも出演したし、2時間ドラマの現場にも慣れてきた。NHKの朝ドラや大河にも出演した。その都度、それなりに評価されたけど、なかなか思うような役は回ってこない。
「お芝居の現場では、グラビアアイドルとしか見てもらえないんです。いくら頑張っても、
グラビアアイドルがやっているとしか思ってもらえない。肌の露出を求められる役も多く、本当はやりたくないな、と思うこともありました(笑)。この状況を変えるには、どうしたらいいんだろう?って、ずいぶん悩みました。そうこうするうちに事務所とも上手くいかなくなってきて、だんだん自信を失ってきて。結局、事務所を辞めてフリーになったんです。同時に10年間続けて来たグラビアも、一時引退しました」
 いったん、リセット。この時期彼女は、ふたつ、人生初の経験をしている。
 ひとつは、結婚。そしてもうひとつが、アルバイトだ。
「家に引きこもってばかりもいられないので、鉄板焼き屋さんで、仕込みのアルバイトをしました。鉄板を磨いたり、食材を切ってストックしておいたり、あとは掃除とゴミ出しですね。接客はやりたくなかった。バレたくなかったんです、隠したかった。自信を失って、人前に出るのが怖かったし、そのときはまだ変なプライドがあったんですね。でもだんだんそのプライドも消えていき、どんどん普通の女の子になりかけていました」
 そんなとき、舞台をやらないか、という声がかかった。
「すごく小さい劇場でした。最初に考えたのは、そこに出演したら、人がどう思うだろう? ということ。落ち目だって言われるんだろうなって、半年くらいクヨクヨ悩んだんですけれど、思い切って出ることにしました。舞台、3年ぶりでした。でも、出たら本当に楽しかったんです! 1ヶ月半くらいみんなで一生懸命稽古して、それをお客さんの前で見ていただくときの感動は、やっぱり格別なんですね。小さい劇場でも、出たくても出られない人もいる。私はそこで役をもらって舞台に立つことができる。これってすごい幸せなことなんだって、今さらですけど、わかりました」
 フリーランスになって、それまで経験しなかったことも、できるようになった。
「お仕事の依頼を受けて打ち合わせに出向いたり、仕事の後で請求書を書いたりしてました。それまで毎日車移動が当たり前だったのに、フリーになってからは行き方を調べて電車に乗って行くんです。そういうひとつひとつのことが新しくて、楽しかった。良い人生経験になりました」
 縁あって、昨年4月に新たに事務所に所属。女優として心機一転、再スタートを切った。
「もう一度舞台に立って、自信を取り戻してきたんです。もっとやりたい、と思って、お世話になることにしました」