高校2年生のとき、杉本有美の人生を大きく変える事件が起こった。高校2年のとき、三愛の水着モデルに選ばれたのだ。
「まさか自分が将来、この仕事を続けるとは思っていなかったんです。四年制大学に進むか短大に行くか考えていたちょうどその頃に、水着のキャンペーンガールに選ばれました。そのとき、ショックだったのは、杉本有美として取材を受けてインタビューで質問を受けても、自分自身の言葉で何も話せなかったこと。何を聞かれても、言葉が出てこない。何を聞かれても、答が出てこないんです。私って自分のこと何も知らないんだ、と愕然としました」
 さらにモデルとしても、初めて限界を感じた。
「水着で撮影されるとき、表情で演技を求められたんですけど、それもなかなかできませんでした。それまで演技というものに興味はなかったんです。でもDVDや動画の撮影になると、目とか表情で変化を求められる。それに応えられない自分が悔しくて。そこからですね、演技、お芝居というものに惹かれるようになったのは」
 自分は何者なのか、その自分をどう表現するのか。その延長線上に、女優という仕事が浮かび上がった。間もなく高校卒業を機に、彼女は上京。新しい人生に飛びこんだ。
「4月3日に上京して、最初はひとりでご飯を食べられませんでした。それまでずっと家族仲良く暮らしていたので、ひとりで食事するということが信じられなかったんです。ひとりの食事ってこんなにサミシイものなのかと思いました。どうしていいのかわからなくて、仕方なく食事を抜いたり、友達と電話で話しながら食べ物を口に運んだり。最初はそんな感じでした」