ダーツは現在、2種類ある。ひとつは昔からある、金属製の矢尻でボードに突き刺す、ハードダーツ。そしてもうひとつはプラスチック製の矢尻でボードに当てて、デジタルで点数が表示されるソフトダーツ。牧野百花がプロとして登録しているのはこの、ソフトダーツのほうだ。ソフトダーツが普及してから競技人口も増え、ゲームセンターやダーツバーで競技を楽しむファンが増加中だという。
 プロになって5年目、牧野百花は今、人気プロ・ダーツプレイヤーとして、大忙しだ。
「今までで最高位は一昨年、全国で18位でした。その18位という結果を受けて去年、もっと高みを目指したいと思って、フォームをまるまる変えてみよう、と無謀な挑戦をしました。ヒジの位置を変えたり、立ち方を変えたり、一度身体にしみついたフォームを1回壊して、また新たに作り直すのって、けっこう大変です。コーチには最低1年かかると言われ、まあそれでもいいいや、と思って。去年はそういうわけで成績、ふるわなかったんですけど、今年は現在の時点で全国7位なんです。体幹を鍛えるためにヨガを始めたら、投げているときの感覚もちがってきたし。インナーマッスル鍛えたら投げても身体の軸がぶれなくなってきました。結果、成績が着実に上がってきているので、1年間苦しんだ甲斐はあったかな、と」
 動画で試合風景を見てみたら、なるほど、3本のダーツを持って無造作に投げているように見えるけど、どれもボードの真ん中に、吸い込まれるように刺さっていく。
「私はめちゃめちゃプレッシャーに弱いし、緊張しいだし、あまりこう、自分に期待するタイプじゃない、というか。〝私、こういうときにうまくできるタイプじゃないしな〟って心の中でいつも思っていて、どっか悲観的になっちゃうクセがあるんです(笑)。でも楽しいことをやっているときは、そういうネガティブな感情がわいてこないんですよ。楽しいことなら、うまくいく。最近はプレッシャーすら、楽しく思えるようになりました。最近は私、変わってきたなって思います、自分でも」